アニメーションダンスの基礎|ストリートダンスのスタイルのルール

アニメーションダンスを習得するポイントを全12回にわたって解説していくシリーズの第3回目です。

アニメーションダンスの基礎|ストリートダンスのスタイルのルール

前回の解説

前回(第2回)の解説では、”アニメーションダンスとアニメーションスタイルの違い”にスポットを当てて解説しました。

【第2回】アニメーションダンスとアニメーションスタイルの違い

アニメーションダンスの基礎|アニメーションダンスとスタイルの違い
アニメーションダンスとアニメーションスタイルは各々の創られた背景が異なるため表現にも違いがあります。

第3回目となる今回は、“スタイルのルール”とアニメーションダンスについて解説します。

スタイルにはルールがある

ポッピン・ピート(Popin’ Pete)はアニメーションダンスとは直接関係のある人物ではありませんが、アニメーションダンスの表現の根幹を成す最重要なスタイルである「ポッピング」の宗家家元、エレクトリックブガルーズ(Electric Boogaloos)として、ストリートダンスの黎明期(れいめいき)からストリートダンスシーンの中心で活躍して来た”生き証人”であり、現在も現役として活躍する一方、エレクトリックブガルースタイルポッピン(ブーグスタイル)(※1)の世界普及に努めているレジェンドです。

ポッピン・ピートの発言はポッピングに限定した話ではなく、ストリートダンス全体についても当てはまる事をストレートに話しているため非常に参考になります。

※1:エレクトリックブガルーズが創出し、提唱しているダンススタイルの総称の事

ポッピン・ピートの発言

これまでポッピン・ピートが発言して来た中から、1999年のインタビューの概要を紹介すると、ポッピングのコンテストの場でポッパーであると自称しながらポッピングをやらずに他のスタイルを踊っているのはおかしい、というところに端を発し、ポッピングはブガルー・サムが1976年に創り出したただ一つのスタイルを示す名前であると言う事を覚えておいてほしい、と発言しています。

この発言内容を理解するには、エレクトリックブガルーズが提唱するダンススタイルの総称である「エレクトリックブガルースタイルポッピン(ブーグスタイル)」という大きい器の中に「ブガルースタイル」、「スケアクロウスタイル」、「パペットスタイル」などの、それぞれが”固有の意味を持っているスタイル”が入っていて、その中の一つに「ポッピンスタイル」も入っており、ブガルーもスケアクロウもパペットも、そしてポッピングも独立した”1つのスタイル”であるという事を前提としておさえておく必要があります。

この事を前提に、曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現するポッピンスタイルをメインスタイルとする中で、表現者の個性としてブガルースタイルやパペットスタイルなどの他のスタイルのフレーバーを入れて表現したり、ポッピングと他のスタイルを組み合わせた”スタイリング”を入れて表現するのはOKでも、ポッピングを表現する場でポッピングを全くやらずに別のスタイルのみで踊るのはNGであるとポッピン・ピートは言っているのです。

このポッピン・ピートの発言で最も大事な事は、ストリートダンスの「スタイル」にはルールがある、という事です。

そしてアニメーションダンスもストリートダンスであるため、この”スタイルのルール”が当てはまります。

ポッピングについては第8回目で詳しく解説しています

【第8回】アニメーションダンスとポッピング

ポップダンス(ポッピング)とは|絶対おさえておきたい基本と練習
歴史、ジャンルとスタイルの違いから、音の取り方、身体の使い方の基本と練習方法の考え方まで解説します。

アニメーションダンスとアニメーションスタイル

本題に入る前に、アニメーションダンスとアニメーションスタイルの違いについておさらいします。

アニメーションダンスの表現を大別するとアニメーションダンスとアニメーションスタイルの2つがあります。

アニメーションダンスは、今日一般の人々に「アニメーションダンス」として認識されているダンスのジャンルの事です。

この「今日のアニメーションダンス」は、もととなった前進の「オールドスクールアニメーションダンス」の流れを汲んでいる歴史的背景があります。

一方アニメーションスタイルは、ジャンルのポッピングの配下にある「オールドスクールアニメーションスタイル」という1スタイルの事です。

今日のアニメーションダンスの表現とは

今日のアニメーションダンスは、Dubstepに代表される独特の強弱の激しい曲調と静かでエモーショナルな曲調のコントラストに合うように、ダンスの構成をオールドスクールアニメーションダンスの表現手法から再構築しているのが特徴で、その表現構成を分解すると、オールドスクールアニメーションダンスで培って来た既成の各種スタイルと全て共通しているのが分かります。

その表現手法は、Old Skool Electroなどのビートに合わせ、ブガルー・シュリンプの流れるように動くロボット的要素(リキッドアニメーション)をベースとし、フラットトップの全身ティッキングやスローモーションに代表されるイリュージョン的要素、そしてウェーブ、キングタット、バイブレーションなどの各種スタイルや、パントマイムなどの他の表現要素を加えたスタイルを組み合わせる事によって表現する手法です。

アニメーションスタイルの表現とは

アニメーションスタイルは、FunkやOld Skool Electroなどのビートに反応してポーズを形成した直後に、身体の各部位を同時に弾いて表現するポッピンスタイルをメインスタイルとし、ダンスの構成の中の1パートでウェーブやティッキングなどの各種スタイルを表現すると共に、ストップモーション・アニメーションを彷彿させる”滑らかさの中へ細かくカクカクした独特の動き”の表現を組み込む事によって表現しています。

アニメーションダンスであると決定づけるものとは

前述の”スタイルのルール”にもとづくと、アニメーションダンスをいわゆる”アニメーションダンス”として決定づけるものは、それを表現するスタイルの有無に関係します。

つまり、ポッピングであればダンスの構成の中にポッピンスタイルのパートが設けてある事であり、アニメーションダンスであればダンスの構成の中に”アニメーションダンス”を表現するスタイルのパートが設けてある事です。

スタイルの中の要素について

アニメーションダンスを表現する時、表現者はポッピングやロボットやウェーブなどの各種スタイルのパートをタイムラインに組み込む事でダンスを構成します。

それと共に、アニメーションダンスの「リキッドアニメーションスタイル」、アニメーションスタイルの「ストップモーション・アニメーションスタイル」のように、ダンスの構成の中へ「アニメーションスタイル」を演じる枠を別枠のパートとして組み込む事でアニメーションダンスを構成します。

そしてその「アニメーションスタイル」のパートを表現するための手段として、各種スタイルからサンプリングした成分を組み合わせる事によって「アニメーションスタイル」のパートの表現を成立させています。

この各種スタイルからサンプリングした成分の事を、スタイルではなく“要素”と呼びます。

例えばリキッドアニメーションスタイルの場合、構成する要素を分解すると、ロボットの動きとカートゥーン・アニメーションの動きの2つの要素に大別されます。

また、ストップモーション・アニメーションスタイルのコブラの場合は、スネーク(コブラ)の動きと、ストップモーション・アニメーションのクリーチャーの動きをイメージした滑らかさの中に細かくカクカクした独特の動きの2つの要素を軸に、表現者によってはポッピングの”身体を弾く”使い方を利用したランダムなアクセント、バイブレーションを小刻みに入れるなどの要素があります。

スタイルのルール

例えばポッピングをメインスタイルとして踊る場合、ポッピンスタイルをメインスタイルとして表現しつつも、曲の状況に応じてダンスの構成の中にブガルースタイルやウェービンスタイル、ティッキンスタイルなど、他のスタイルのフレーバーを入れて表現する事と思います。

これは表現者の表現の個性としてダンスを演じるオーソドックスな表現手法で誰もが行っている手法です。

また、ポッピンスタイルへウェービンスタイルを組み合わせたムーブをダンスの構成に入れて表現する事もあります。

このメインのスタイルへ別のスタイルを組み合わせてムーブを表現する手法を“スタイリング”と呼びます。

ここで大事な事は、スタイリングして出来たムーブは別物のスタイルとなるという事です。

つまり、ポッピングにウェービングをスタイリングして表現した場合、ポッピングでもウェーブでもない「ポッピンウェーブ」という別物のスタイルとなります。

事例で考えるスタイルのルール

ここまでの話を踏まえて、下記の場合がアニメーションダンスに該当するのかどうかについて考えていきたいと思います。

例題1

アニメーションダンスを表現する場でポッピングとウェーブのみで踊っている。

例題2

アニメーションスタイルを表現する場でポッピングとウェーブのみで踊っている。

答え合わせとしては、例1、例2共にNGです。

なぜなら、ストリートダンスにおける”スタイルのルール”の原則にもとづくと、例1ではアニメーションダンス、そして例2ではアニメーションスタイルを何も表現していないという事になるからです。

アニメーションダンス、そしてアニメーションスタイルを演じる際に、構成の中へポッピングやウェーブといった各スタイルのフレーバーを入れて踊る事は全く問題ないのですが、例1でアニメーションダンスを表現するのであれば、「リキッドアニメーションスタイル」をベースとした表現がポッピングやウェーブとは別枠で構成の中になければなりません。

また、例2も同様、構成の中に「ストップモーション・アニメーションスタイル」をベースとした表現が別枠でなければなりません。

それでは次の場合はどうでしょうか。

例題3

ティッキングのみで表現してもアニメーションダンス、あるいはアニメーションスタイルになる。

例題4

カートゥーン・アニメーションに登場するキャラクターが「骨が無いように動いているシーン」からヒントを得て考案されたブガルーのみで表現してもアニメーションダンス、あるいはアニメーションスタイルになる。

答え合わせとしては、例3、例4共にNGです。

なぜなら、ダンスの構成を全てティッキングあるいはブガルーで表現しても、それは「ティッキンスタイル」あるいは「ブガルースタイル」を延々と演じているだけであり、アニメーションダンスやアニメーションスタイルを表現するためにダンスの構成の中へ設ける「アニメーションスタイル」の枠には成り得ないからです。

それでは最後に次の場合を考えたいと思います。

例題5

アニメーションダンス、あるいはアニメーションスタイルを表現する場において、ポッピング、ウェーブ、ティッキング、スローモーション、バイブレーション、キングタット、フロアムーブの7つのスタイルをそれぞれダンスの構成に組み込んで踊っている。

答え合わせから言うと、この場合もNGです。

なぜなら、アニメーションダンスの中にある「リキッドアニメーションスタイル」は1つのスタイルであり、アニメーションスタイルである「ストップモーション・アニメーションスタイル」も1つのスタイルであるため、それぞれのスタイルをひとまとめにして全体で「アニメーションダンス」、あるいは「アニメーションスタイル」と見なす事は出来ないからです。

つまり、どんなに表現するスタイルの数が多くても、また仮にポッピングにウェーブをスタイリングしたり、スローモーションにティッキングをスタイリングして別のスタイルとして表現しても、やっている事はポッピング、ウェーブ、ティッキング、スローモーション、バイブレーション、キングタット、フロアムーブの各種スタイルを単発で表現しているか組み合わせて表現しているだけであり、「アニメーションダンス」、「アニメーションスタイル」の表現がダンスの構成の中に別枠でないのであれば「アニメーションダンス」にも「アニメーションスタイル」にも成り得ないのです。

創作ダンス系アニメーションダンス

今日のアニメーションダンスにはもう一つのカテゴリーが存在します。

それはアニメーションダンスの表現手法を利用し、計算された演出によって表現する“創作ダンス系アニメーションダンス”です。

この「創作ダンス系アニメーションダンス」がアニメーションダンスやアニメーションスタイルと異なる点は、ストリートダンスの”スタイルのルール”の原則にとらわれず、ダンスの構成全体で「アニメーションダンス」とみなしている点です。

つまり、アニメーションダンスの「リキッドアニメーションスタイル」、アニメーションスタイルの「ストップモーション・アニメーションスタイル」のように、ダンスの構成の中にアニメーションを表現する枠を持たず、構成の各パートで単発で行うウェーブ、ティッキング、バイブレーションなどの各スタイルをひとまとめとする事によって、全体でアニメーションダンスとみなしている点です。

そのため、ストリートダンスの”スタイルのルール”の原則にとらわれないこのカテゴリーの事を、私はストリートダンスの「アニメーションダンス」と区別して「創作ダンス系アニメーションダンス」という位置づけとしています。

次にやるべき事

ストリートダンスのルールとアニメーションダンスの関係について理解した次にやるべき事は、アニメーションダンスで使われる代表的な各種スタイルとその関連性について理解する事です。

アニメーションダンスとアニメーションスタイルは、前者が「ジャンル」、後者が「スタイル」という違いはありますが、表現されるダンスの基本構成は4種類のスタイルで構成されています。

その基本構成を担う4種類のスタイルとその他の各種スタイルとの関連性を踏まえ、アニメーションを表現するダンスの構成で各種スタイルがどのような使い方をしているのかについて解説します。

【第4回】アニメーションダンスと各種スタイル

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それでは、またの機会にお会いしましょう。

KAIZOU NINGEN

ダンス研究家。専門はムーンウォークとアニメーションダンス。幼少期にマイケル・ジャクソンのメカニカルな動きを取り入れたダンスに影響を受け、1990年よりダンスの研究を始める。マイケル・ジャクソン没後10年特集番組へ情報提供(TBS「一番だけが知っている」:2019年)。

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