ブガルー・シュリンプ|これだけはおさえておきたいアニメーションダンスの「特徴」

アニメーションダンスの「全体像」の基礎から練習方法までを全12回にわたり解説していくシリーズの第8回目です。
アニメーションダンス講座|読めばわかる基礎と練習方法
アニメーションダンスの「全体像」の基礎から練習方法までを全12回シリーズで解説します。
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ブガルー・シュリンプ|これだけはおさえておきたいアニメーションダンスの「特徴」

これまでの解説では折に触れてブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)について言及してきましたが、ここで一度情報を整理したいと思います。

そこでシリーズ8回目の今回は「ブガルー・シュリンプ」にスポットを当て、アニメーションダンスを習得する上でこれだけは理解しておきたいブガルー・シュリンプの創り出した「アニメーション」のスタイルのルーツと、ブガルー・シュリンプの表現するダンスの「特徴」について詳しく解説していきたいと思います。

創り出したスタイルのルーツ

「アニメーション」(Animation)(※1)は、ロボットやアニメーションの特撮技術からインスピレーションを受けて創られた、「映像特殊効果」を身体で表現するスタイルです。

このスタイルは1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)によって世界中のストリートダンサーへと広まり、その後マイケル・ジャクソンが1980年代から90年代にかけて開催したバッドツアー(1987年)、デンジャラスツアー(1992年)、ヒストリーツアー(1996年)の3つのワールドツアーで披露したことによって一般の人々の目にも触れるようになりました。

※1:ブガルー・シュリンプとポッピン・タコ(Pop N Taco)(※2)が1983年に創り出したスタイル。

※2:マイケル・ジャクソンが自身の「アニメーションダンス」の表現を確立していく過程においてブガルー・シュリンプと共に影響を受けたレジェンド。「ストップモーションアニメーションスタイル」、「アニマトロニクススタイル」のオリジネーター。1983年から1997年までマイケルのパーソナルダンストレーナー(クリエイティブコンサルタント)として、ポッピングとアニメーションスタイルのすべてをマイケルに伝授した。また、マイケルの作品にはディズニーアトラクション体感型3D映画「キャプテンEO」(1986年)、映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminal(1988年)、ショートフィルム「ゴースト」(1996年)などに出演した。

ブガルー・シュリンプ

これを踏まえ、ブガルー・シュリンプは、マイケル・ジャクソンが自身の「ムーンウォーク」と「アニメーションダンス」を確立していく過程において影響を受けた人物として知られているレジェンドです。

1983年から1991年までマイケル・ジャクソンのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわりました。

そのブガルー・シュリンプの名が世界中のストリートダンサーへ知れわたるきっかけとなったのが映画「ブレイクダンス」で披露した「アニメーションダンス」です。

創り出したスタイル

ブガルー・シュリンプが自身の表現のインスピレーションの源として幼少期からおもに研究していたのは「ロボット」でした。

ロボットダンスは、当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」で1970年代初頭にロボットを踊るストリートダンサーが登場しはじめたことがきっかけとなり広まっていったダンスです。

1973年の同番組でジャクソン5のヴォーカルだったマイケル・ジャクソンが新曲「Dancing Machine」の間奏部分でロボットダンスを披露したことによって、全米の若い世代がロボットダンスをやりはじめるようになったことから本格的に広まりました(※参照:YouTube)。

ロボットダンスが全盛期を迎えていた1970年代後期の「ロボットダンスの表現」は、各部位の可動範囲をおもに①左右(X軸)、②上下(Y軸)、③前後(Z軸)、④(各軸の)回転の4つに制限し、「1モーションにつき1部位」の機械的動作を基本原則とするのが当時のトレンドとなっていた時代でした。

これに対し、「可動範囲の制限を解放したロボットの動き」の要素と、カートゥーンアニメーションの「パラパラ漫画を細かく滑らかに映し出した動き」の要素を組み合わせることによって表現される「流れるように動くロボット」を追求していたのがブガルー・シュリンプでした。

この「流れるように動くロボット」の表現が「リキッドアニメーションスタイル」(※3)です。

そしてこのリキッドアニメーションスタイルの表現を自身のダンスの構成の随所に散りばめ、ルーニー・テューンズ(Looney Tunes)、トムとジェリー(Tom & Jerry)、ポパイ(Popeye)などに代表されるカートゥーンアニメーションの「コミカルな動き」や、秒間のコマ数を少なくしたカートゥーンアニメーションの動きからインスピレーションを受けて創られたパラパラ漫画のような表現の「ティッキング」などを組み合わせることによって独自のスタイルを表現しているところにブガルー・シュリンプの「アニメーションダンス」の特徴があります。

映画「ブレイクダンス」で披露したブガルー・シュリンプの「ほうきを使ったソロパフォーマンス」シーンでは、「ほうきを左右に振りながら掃除をするしぐさをモチーフとした表現」の部分でアニメーションダンスのリキッドアニメーションスタイルを表現しています。

※3:ブガルー・シュリンプが1983年に創り出したスタイル。

ブガルー・シュリンプのダンスの「特徴」

以上を踏まえ、ブガルー・シュリンプの表現するダンスの「特徴」を簡潔にまとめると次のとおりです。

ダンスの構成の中で「アニメーション」をメインスタイルとして表現している。

このことはつまり、「アニメーション」は大別すると、ダンスのジャンルの「ポッピング」とダンスのジャンルの「アニメーション」の2つのジャンルでおもに採用しているスタイルですが、ブガルー・シュリンプのダンスはその後者のジャンルの「アニメーション」に属しているため、ダンスの構成の中で「ポッピング」をメインスタイルとしないで「アニメーション」に特化して表現しているところに特徴がある、ということです。

その上でブガルー・シュリンプの「表現者の個性」として、ジャンルの「アニメーション」の配下にある他のスタイル(※4)も取り入れて表現することによって「自分の表現」を形成しています。

※4:ポッピング(Popping)、ウェーブ(Waving)、ロボット(Robot)、ティッキング(Ticking)、ストロボ(Strobing)、スローモーション(Slow motion)、スネーキング(Snaking)、ムーンウォーク(Moonwalk)、バイブレーション(Vibration)、キングタット(King Tut)、など(※5)。

※5:各種スタイルの詳しい解説は、「アニメーションダンスの基礎|代表的スタイルの種類とやり方のポイント」を参照。

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次回について

以上がブガルー・シュリンプのダンスの「特徴」についての解説でした。

これまでの解説ではブガルー・シュリンプと同様に折に触れてポッピン・タコについても言及してきましたが、ここで一度情報を整理したいと思います。

第9回|ポッピン・タコ

そこでシリーズ9回目の次回は「ポッピン・タコ」にスポットを当て、アニメーションダンスを習得する上でこれだけは理解しておきたいポッピン・タコの創り出した「アニメーション」のスタイルのルーツと、ポッピン・タコの表現するダンスの「特徴」について詳しく解説していきたいと思います。

ポッピン・タコ|これだけはおさえておきたいアニメーションダンスの「特徴」
ポッピン・タコのダンスの「特徴」について解説します。

それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。

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