ウェーブダンスのやり方|基礎から応用のアニメーションダンスまで

アニメーションダンスを習得するポイントを全12回にわたって解説していくシリーズの第9回目です。

ウェーブダンスのやり方|基礎から応用のアニメーションダンスまで

前回の解説

前回(第8回)の解説では、”アニメーションダンスとポッピング”にスポットを当てて解説しました。

【第8回】アニメーションダンスとポッピング

ポップダンス(ポッピング)とは|絶対おさえておきたい基本と練習
歴史、ジャンルとスタイルの違いから、音の取り方、身体の使い方の基本と練習方法の考え方まで解説します。

第9回目となる今回は、アニメーションダンスとウェーブについて解説します。

ウェービンスタイルの歴史

身体をコントロールして流れる水のように表現するウェーブダンス(ウェービング)は、エレクトリックブガルーズのトイマン・スキート(Toyman Skeet)ことアルバート・プレイダー(Albert Prader)が、”タイダル・ウェーブ・スキート”(Tidal Wave Skeet)のストリートネームだった時に身体を波打つようにアイソレーションしていく「タイダルウェーブ」(津波)というボディーウェーブを1976年に開発したのが始まりです。

アームウェーブの登場

その後、イギリスのミュージシャンのロッド・スチュワート(Rod Stewart)が1981年12月に発表した曲「Young Turks」のミュージックビデオの中で、ボディーウェーブと共にハンドウェーブのような動きを行うダンサーが登場します。

この”ハンドウェーブのような動き”の特徴は、手首、肘、肩の主要関節を使い、ハンドウェーブの要領で左腕の手首から肘、肩を経由して右腕へ順にウェーブの波を作りながら滑らかに動かしていく動きとなっており、ハンドウェーブが完成する前の時期のアームウェーブの動きとして資料的価値のある映像となっています。

ハンドウェーブの登場

ウェービンスタイルが本格的に広がったきっかけは、1982年にアメリカのカリフォルニア州北部にあるサンフランシスコ・ベイエリア周辺のストリートダンサー達が“指先から始まる、より滑らかなハンドウェーブ”を開発した事によります。

そしてその影響を受けたブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)、ポッピン・タコ(Pop’N Taco)によって、その後さらに高度な表現のウェーブが開発されていきました。

ウェービンスタイルの実際

ウェーブの種類は主に、手の指先から肘、肩を経由して反対側の手の指先まで流していくハンドウェーブ、頭から足にかけて流した後、折り返し足から頭にかけて流していくボディーウェーブ、手を添えたところにウェーブの波の山を作って流していくタッチウェーブの3種類の流し方があります。

ウェーブダンスは正面、側面など、”一つの面”から見せるアプローチが多いため、どうしても平面的に捉えてしまいがちですが、表現者がウェーブを行う際に最初に理解しておいた方が良い事は、ウェーブを演じているのは人間であり、その人間は平面ではなく立体であるという事です。

特にハンドウェーブを行う場合、ウェーブに入る前の”構え”の段階からこの事を意識して行う事が求められます。

理想的なハンドウェーブの構え

“理想的なハンドウェーブの構え”について解説します。

まずは両肩よりも下の任意の位置で両腕を広げます。

肘は伸ばしきらず、肩から指先にかけて緩やかなカーブを描くように広げます(図1)。

横から見た時、手の位置は身体の側面よりも前方の任意の位置とし、肩から指先にかけて緩やかなカーブを描いているか再度チェックします(図2)。

指先の方向は真横ではなく肩から腕にかけての延長線上の斜め前方へ向け(図2)、指先は反らないようにします(図3)。

親指は離れないように手のひらにくっつけ、親指が反らないようにします(図3)。

「理想的なハンドウェーブの構え」であるべき理由

なぜ「理想的なハンドウェーブの構え」が「緩やかなカーブを描くフォーム」でなければならないのかというと、一つはハンドウェーブ時の関節を動かす仕組みに由来するため、そしてもう一つはケガの防止のための2つの理由からです。

ハンドウェーブは肘と肩の関節の旋回を利用して滑らかに動かす事で表現しますが、例えば両腕を肩と同じ高さの水平位置に伸ばした状態からハンドウェーブを行った場合、可動範囲が制限され、肘と肩の関節に負担がかかる上、ウェーブの波が作りづらくなってしまう事からおすすめ出来ません。

尚、ウェーブの表現をより高度な表現へと進化する事に貢献したブガルー・シュリンプとポッピン・タコもハンドウェーブの構えでは「緩やかなカーブを描くフォーム」を採用している事から、多彩なウェーブの表現にも対応出来るこのフォームは理にかなったフォームであるという事が言えるでしょう。

ウェーブの3大原則

ウェーブは、ポッピングやティッキングなどの他のスタイルとの組み合わせの相性が良く、ダンスの表現の幅を広げる上でのメリットがありますが、その反面、しっかりとした基礎が出来ている上で他のスタイルと組み合わせたスタイルを行わなければ、上辺だけをなぞっているだけだとすぐに見抜かれてしまうデメリットもあります。

つまり、「ウェーブは一度流してしまったらごまかしが利かない」という事です。

そのため、ウェーブを使いこなせるようになるためには、次の3大原則を基本とした通常ウェーブの下地をしっかり作っていく事をおすすめします。

原則1.一度ラインを作ったら流し終わるまでラインを崩さない

ラインを作るとは、ウェーブの構えの事です。

一度構えたらそのラインを固定し、ウェーブ中はラインを崩さずに波の山の部位だけを動かします。

原則2.波の大きさを一度決めたらサイズを変えない

ウェーブの波の大きさには主に大・中・小の3パターンがあります。

通常は中サイズで行いますが、一度中サイズでウェーブを始めたら、途中で大や小にサイズ変更しないで最後まで流しきります。

原則3.ウェーブ前後の波の山を残さない

ウェーブを行っている波の山の部位以外に山が残っていると、せっかくのウェーブが台無しになってしまいます。

特にハンドウェーブの場合は、指の付け根のところで波の山が残っていたり、指先が反りすぎていたり、親指が上を向かないようにします。

ボディーウェーブについて

ボディーウェーブの基本の流し方は「頭から足にかけて流した後、折り返し足から頭にかけて流していく」ですが、基本をおさえる上で大事な事として「流し方の通り道は1通りではない」という事を理解しておきましょう。

ボディーウェーブの流し方の通り道は大きく分けると「表」「裏」の2通りがあります。

「表」とはボディーウェーブの中でも基本中の基本となる流し方で、「行き」の頭から足にかけて流すボディーウェーブ(頭からあご→首→胸→腹→腰→ひざ→足首→足のつま先)、そして「帰り」の足から頭にかけて流していくボディーウェーブ(つま先から足首→ひざ→腰→腹→胸→あご→頭)共に、主に「身体の表面を使って流していく流し方」です。

「裏」とは、「身体の表面を使って流していく流し方」に対し「身体の裏面を使って流していく流し方」で、「行き」は頭から背骨(頸椎→胸椎→腰椎)→おしり→ひざ裏→足首→かかと、「帰り」はかかとから足首→ひざ裏→おしり→背骨(腰椎→胸椎→頚椎)→頭へと流していきます。

参考

ウェーブの基本3種類の流し方を使って表現しているウェーブ・コンビネーションです。

序盤のハンドウェーブからボディーウェーブで行う「ボディーウェーブ」は、「行き」の頭から足にかけては「裏」、「帰り」の足から頭にかけては「表」で行っています。

ウェービンスタイルとアニメーションスタイルの違い

アニメーションダンス(※1)やアニメーションスタイル(※2)を構成するスタイルの基本構成は、ポッピング、ウェーブ、ロボット、アニメーションの4種類のスタイルです。

このうちポッピング、ウェーブ、ロボットの3スタイルは各固有のスタイルを持っています。

※1:今日のアニメーションダンスおよびその前身のオールドスクールアニメーションダンス(「リキッドアニメーションスタイル」をベースとした表現)

※2:オールドスクールアニメーションスタイル(「ストップモーション・アニメーションスタイル」をベースとした表現)

例えばウェーブの固有のスタイルというのは、他のスタイルと何も組み合わせない、純粋に”身体をコントロールして流れる水のように表現するスタイル”の事です。

一方、アニメーションは固有のスタイルを持っていないため、ポッピンスタイル、ウェービンスタイル、ロボットスタイル、ティッキンスタイルなどの各種スタイルからそれぞれ要素を抽出して取り入れる事でアニメーションスタイルを成立しています。

このアニメーションのパートを構成する要素のうち、ウェービンスタイルの要素の割合が多いとウェーブを主としたアニメーションとなります。

“ウェーブを主としたアニメーション”の表現とは

それでは“ウェーブを主としたアニメーション”とはどのような表現の事を指すのでしょうか。

例えばウェーブのバリエーションには、ウェーブの動線上へポッピンスタイルを組み合わせたポッピンウェーブ、ウェーブの動線上へティッキンスタイル(ティッキング)を組み合わせたティッキンウェーブなどがありますが、これらはウェーブの派生スタイルであり、アニメーションではありません。

なぜなら、アニメーションのパートでは、ウェーブを主とした”リキッドアニメーション”や”ストップモーション・アニメーション”を表現しない限り、アニメーションの表現には成り得ないからです。

参考:ポッピンウェーブについて

ポッピンウェーブはポッピン・タコが開発したスタイルで、通常のウェーブが身体をコントロールして流れる水のように表現するのに対し、ポッピンウェーブは、ウェーブを流す動線上にポッピングを織り交ぜて表現します。

ポッピングを仕込む間隔が広い場合は、ウェーブを流す過程でポッピングのアクセントが入っている事が分かりますが、ポッピングを仕込む間隔が細かい場合は、一見すると「スピードを速くしたウェーブ」と見間違う人もいます。

この動画では、0:06で足のつま先からボディーを伝って手の指先までウェーブを通す際にポッピンウェーブを入れて表現しています。

参考:ティッキンウェーブについて

ティッキングとは、時計の秒針がカチカチ動いていくように、等間隔に順を追ってパラパラ漫画のような動きを行うスタイルの事です。

この動画では、前半部分でコマ送りのようなハンドウェーブのティッキンウェーブを表現しています。

参考:ストロボウェーブについて

ストロボ(ストロビング)は、フラッシュを連続して点滅した時に照らし出された人物の残像が、通常のスムーズな動きに対して間引いた動きのように見える軌跡を表現するスタイルです。

この動画では、フラッシュの点滅によって照らし出された残像の軌跡をストロボウェーブで表現しています。

ウェーブを主とした”リキッドアニメーション”の表現

ウェーブを主とした”リキッドアニメーション”の表現は、ロボットの要素とカートゥーン・アニメーションの特徴のパラパラ漫画を細かく滑らかにした動きの要素を組み合わせ、”流れるように動くロボット”をベースとしたウェーブです。

この”流れるように動くロボット”の表現にはティッキンスタイル(ティッキング)の要素を利用しており、この動きをウェーブの動線上に入れていきます。

ティッキングとは、時計の秒針がカチカチ動いていくように、等間隔に順を追ってパラパラ漫画のような動きを行うスタイルの事です。

“流れるように動くロボット”のウェーブ表現で行うティッキングは、ウェーブの動線上へフルで入れると単なる”ティッキンウェーブ”となってしまいますので、「ティッキングの要素」をウェーブの動きの中へ溶け込むように小刻み且つランダムに細かいアクセントをつけながら入れていく事がポイントです。

そうする事によって、流すところは流し、カチ・カチッ…と一つ一つの動きのぶれを抑えるところは抑えた、滑らかさのある”流れるように動くロボット”のウェーブ、すなわちリキッドアニメーションウェーブの表現となります。

参考

リキッドアニメーションウェーブを使って表現しているアニメーションダンスです。

参考:リキッドアニメーションウェーブの応用

リキッドアニメーションウェーブとポッピンウェーブを組み合わせて表現しています。

ウェーブを主とした”ストップモーション・アニメーション”の表現

ウェーブを主とした”ストップモーション・アニメーション”の表現は、ストップモーション・アニメーションの動きをベースとしたウェーブです。

ストップモーション・アニメーションの動きとは、内部に骨格を持つ可動式ミニチュア人形の動く様を人間の手で1コマずつ変形させて撮影する事によって、コマ送り再生を早くしたような、滑らかさの中に細かくカクカクした独特のぶれのある動きの事です。

この”滑らかさの中に細かくカクカクした独特のぶれのある動き”の表現にはバイブレーションスタイルの要素を利用しており、この動きをウェーブの動線上に入れていきます。

バイブレーションスタイルとは、全身、あるいは上半身や腕などの身体の特定の部位を小刻みに震わせる事によって表現するスタイルです。

“滑らかさの中に細かくカクカクした独特のぶれのある動き”の表現で行うバイブレーションは、ウェーブの動線上にフルで入れると単なる”バイブレーションウェーブ”となってしまいますので、「バイブレーションの要素」をウェーブの動きの中へ溶け込むように小刻み且つランダムに細かいアクセントをつけながら入れていく事がポイントです。

そうする事によって、流れる動きの中にランダムに生じる”ぶれ”がストップモーション・アニメーションに出てくるクリーチャーのような動きとなり、これがストップモーション・アニメーションウェーブの表現となります。

参考

ストップモーション・アニメーションウェーブを使って表現しているアニメーションダンスです。

次にやるべき事

アニメーションダンスとアニメーションスタイルのウェーブの違いについて理解した次にやるべき事は、アニメーションダンスにおけるロボットとロボット的な動きについて理解する事です。

ロボットの動きを取り入れた表現には主に3種類の表現があり、アニメーションダンスやアニメーションスタイルではこれらを使い分けて表現する事が求められます。

この3種類の表現とはどのような表現なのでしょうか。

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KAIZOU NINGEN

ダンス研究家。専門はムーンウォークとアニメーションダンス。幼少期にマイケル・ジャクソンのメカニカルな動きを取り入れたダンスに影響を受け、1990年よりダンスの研究を始める。マイケル・ジャクソン没後10年特集番組へ情報提供(TBS「一番だけが知っている」:2019年)。

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