ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンから学ぶ上半身の姿勢

ムーンウォーク(バックスライド)のしくみから表現のポイントまでを全10回にわたり解説していくシリーズの第9回目です。
ムーンウォーク講座|10のステップで上達するバックスライドのやり方
ムーンウォークのしくみから表現のポイントまでを全10回シリーズで解説します。
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ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンから学ぶ上半身の姿勢

バックスライドの上半身の姿勢は大別すると「直立姿勢」と「前傾姿勢」の2つに分かれます。

このうち理想的なバックスライドの上半身の姿勢は「前傾姿勢」です。

マイケル・ジャクソンは自身のムーンウォーク(バックスライド)の表現を確立していく過程において上半身の姿勢についてもよく研究しており、1983年のモータウン25(※1)での初披露のあとは直立姿勢から前傾姿勢へと変更しています。

そしてその角度もムーンウォーク(バックスライド)の表現の変化にともない「最適な前傾姿勢の角度」へと改良して進化していきました。

そこで今回は「バックスライドの上半身の姿勢」にスポットを当て、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の前傾姿勢の角度の変遷から導き出した「最適な角度」について詳しく解説していきたいと思います。

※1:マイケル・ジャクソンがジャクソン5時代に所属していたレコードレーベル「モータウン」の設立25周年を記念して開催された音楽の祭典。そのハイライトは1983年5月16日に全米でTV放送された。祭典の正式名称は「Motown25: Yesterday, Today, Forever」(モータウン25:昨日、今日、そして永遠に)。

上半身の姿勢

結論から先に言うと、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の前傾姿勢の角度の変遷から導き出した「最適な角度」は「10~15°」です。

これを踏まえ、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の前傾姿勢の角度の変遷について詳しく振り返っていきます。

2つの上半身の姿勢

冒頭で解説したように、バックスライドの上半身の姿勢は「直立姿勢」と「前傾姿勢」の2つの姿勢があり、理想的なバックスライドの上半身の姿勢は「前傾姿勢」です。

なぜなら前傾姿勢とすることによって最適なバックスライドの歩幅を取ることができるからです。

直立姿勢

直立姿勢でバックスライドする場合、身体の構造上、歩幅はどうしても小幅に制限されてしまいます。

なぜなら足をバックスライドする際に後方へ深くスライドしたくても直立姿勢の状態が後方へスライドする足の可動範囲に制限をかけ、それ以上足を深くバックスライドすることができなくなってしまうからです。

モータウン25の上半身の姿勢と歩幅

マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を初披露した1983年のモータウン25の時の上半身の姿勢は、前傾姿勢ではなく「直立姿勢」です。

この時のムーンウォーク(バックスライド)のおもな歩幅は自分の足のサイズの0.5~1倍で、モータウン25のあとに披露したムーンウォーク(バックスライド)の歩幅と比較すると「もっとも歩幅が小さい時期」でした(※2)。

※2:詳しくは第6回目の「ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンから学ぶ最適な歩幅」を参照。

前傾姿勢

一方、前傾姿勢でバックスライドする場合、歩幅は直立姿勢よりも大きく取ることができます。

なぜなら上半身を前傾することによって後方へスライドする足の可動範囲を大きく取ることができるため、これにより直立姿勢よりも足を深くバックスライドすることができるからです。

モータウン25のあとの上半身の姿勢と歩幅

モータウン25のあと、マイケル・ジャクソンはムーンウォーク(バックスライド)の上半身の姿勢を直立姿勢から「前傾姿勢」へ変更します。

マイケル・ジャクソンが前傾姿勢へ変更したおもな背景は「歩幅を大きく取りながらバックスライドする表現」へと改良したからです。

そして前傾姿勢へ変更したモータウン25のあとの歩幅は、たとえば1987年のバッドツアーや1992年のデンジャラスツアーを見てもわかるように、モータウン25の0.5~1倍よりも大幅に改良していることがわかります。

例1. バッドツアー (1987年)

2倍、2.5倍以上の突出した数値も叩き出していた「攻め」の時期。

◇おもな歩幅:1.3~1.8倍

例2. デンジャラスツアー (1992年)

「歩幅を大きく取りながらバックスライドする表現」でムーンウォーク(バックスライド)の一つの完成形に到達。

◇おもな歩幅:1.2~1.7倍 (※おもに「1.5倍」を推移)

マイケルの前傾姿勢の角度

マイケル・ジャクソンは自身のムーンウォーク(バックスライド)の表現を確立していく過程において上半身の姿勢についてもよく研究しており、直立姿勢から前傾姿勢へ変更するだけではなくムーンウォーク(バックスライド)の表現の変化にともないその角度も「最適な前傾姿勢の角度」へと改良して進化していきました。

2つの前傾姿勢の角度

マイケル・ジャクソンの「前傾姿勢の角度」は80年代と90年代で異なっており、そのおもな前傾角度は次の2つです。

1. バッドツアー (1987年):前傾角度15°

2. デンジャラスツアー以降 (1992年以降):前傾角度10°

※本解説における「前傾角度」とは、「直立姿勢を0°として、その姿勢から前傾した時に生じる角度」のことです。

1. バッドツアー (1987年):前傾角度15°

1つ目は、「バッドツアー (1987年):前傾角度15°」です。

この前傾角度は、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)のクオリティーを完成度の高いレベルまで引き上げたジャクソンズヴィクトリーツアー(1984年)を経て全面的にブラッシュアップした時期の角度です。

バッドツアーでは前傾角度15°の最終バージョンを披露しました。

2. デンジャラスツアー以降 (1992年以降):前傾角度10°

2つ目は、「デンジャラスツアー以降 (1992年以降):前傾角度10°」です。

この前傾角度は、「歩幅を大きく取りながらバックスライドする表現」でムーンウォーク(バックスライド)の一つの完成形に到達した時期の角度です。

この角度はマイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を完成したヒストリーツアー(1996年)でも採用しました。

完成バージョンの前傾姿勢の角度

前述のとおり、マイケル・ジャクソンは1996年のヒストリーツアーで自身のムーンウォーク(バックスライド)の表現コンセプトである「月の上を歩いているかのように後ろと前へ同時に歩いていくムーンウォーク」、すなわち「前に進んでいるようで後ろへ進んでいくバックスライド」を完成します。

これ以降披露したムーンウォーク(バックスライド)は、このヒストリーツアーの「完成バージョン」をベースに展開していきました。

そのヒストリーツアーの「前傾姿勢の角度」と「歩幅」は次のとおりです。

ヒストリーツアー (1996年)

モータウン25への原点回帰とムーンウォーク(バックスライド)の完成。

◇前傾姿勢の角度:10°

◇おもな歩幅:0.5~1.6倍 (※おもに「1倍」を推移)

マイケルの「最適な前傾姿勢の角度」

このことからマイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を表現する上で「最適な前傾姿勢の角度」は、「10~15°」で、最終的に採用した前傾姿勢の角度は「10°」であったことがわかります。

最適な前傾姿勢の角度とは

以上をまとめると、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の前傾姿勢の角度の変遷から導き出した「最適な角度」は「10~15°」です。

上半身の姿勢の取り方

ここからは「バックスライドの上半身の姿勢の取り方」について解説します。

最適な上半身の姿勢の取り方

バックスライドの上半身の姿勢は「最適な前傾姿勢の角度」と「最適な歩幅」の2つの要素によって成り立っています。

この2つの要素によって成り立っている「最適な上半身の姿勢の取り方」については次の手順でおこないます。

1. 「最適な前傾姿勢の角度」を取る

2. 「最適な歩幅」を取る

3. バックスライドの動作へ組み込む

1. 「最適な前傾姿勢の角度」を取る

はじめに背中から腰の角度を「最適な前傾姿勢の角度」とします。

具体的には、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の前傾姿勢の角度の変遷から導き出した「最適な角度」である「10~15°」とします。

2. 「最適な歩幅」を取る

次に1の「最適な前傾姿勢の角度」を維持した状態から足を後方へ1歩スライドし、後方へスライドしおわった直後の歩幅を「最適な歩幅」とします。

具体的には、足を後方へ1歩スライドしおわった直後の「つま先を立てていない方の足」のかかとをA点、「つま先を立てた方の足」のつま先をB点とし、このA点からB点の間の歩幅をマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の歩幅の変遷から導き出した「最適なバックスライドの歩幅」である自分の足のサイズの「1~1.5倍」とします(※3)。

※3:詳しくは第6回目の「ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンから学ぶ最適な歩幅」を参照。

3. バックスライドの動作へ組み込む

そしてこの2つの動作を実際にバックスライドの動作へ組み込んで練習します。

安定したバックスライドとするためには、バックスライド1歩目からスムーズに体勢を整えていくことが重要です。

そのバックスライド1歩目の動作の流れは次のようになります。

この動作の流れで大事なポイントは、バックスライド1歩目をおえた直後の姿勢で「最適な前傾姿勢の角度」と「最適な歩幅」を取りおえていることです。
1. 「つま先を立てていない方の足」をバックスライドする

「ムーンウォークの構え」(※4)から「つま先を立てていない方の足」(右足)をバックスライドします(図の右)。

※4:バックスライドに入る直前につま先を立て、その「つま先を立てた方の足」のつま先へ体重の半分以上を乗せる動作のこと。ここではつま先へ体重を乗せずにつま先をスッと素早く立ち上げる動作までをおこなう。

2. 徐々に上半身の姿勢を前傾姿勢へと傾斜していく

この「つま先を立てていない方の足」(右足)をバックスライドしていく過程で徐々に上半身の姿勢を前傾姿勢へと傾斜していきます。

3. 「最適な前傾姿勢の角度」と「最適な歩幅」を取る

そしてバックスライド1歩目をおえて「つま先を立てていない方の足」(右足)がつま先立ちとなった直後に「最適な前傾姿勢の角度」を取りおえている状態とします(図の左)。

それと同時に「最適な歩幅」も取りおえている状態とします(図の左)。

参考:「前傾姿勢の角度」と「歩幅」

以上が「バックスライドの上半身の姿勢」についての解説でした。

参考までに私の場合、「前傾姿勢の角度」は1987年のバッドツアーの「前傾角度15°」を採用しています。

また、おもな「歩幅」は自分の足のサイズの「0.8~1.4倍」です。

なお、私のバックスライドの動画では、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)の完成に到達した1996年のヒストリーツアーの歩幅の「1倍」という数値にリスペクトの意味を込めて、自分の足のサイズの「1倍」を推移するように表現しています。

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次回について

バックスライドの上半身の姿勢について理解した次におさえておきたいことは、「マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の表現について理解すること」です。

Billie Jeanの間奏部分でマイケル・ジャクソンが表現する「ムーンウォーク」は、当時ストリートダンサーの間で流行りつつあった、かかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」にインスピレーションを受けてできた表現です。

そのため、バックスライドもマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」も名称が違うだけで双方に違いはないように思う人もいると思います。

しかしマイケル・ジャクソンは、かかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していくこの表現のことを決して「バックスライド」とは呼ばず、自身の掲げた標語の「ムーンウォーク」として呼ぶことにこだわりを持っていました。

バックスライドとマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の違いは、バックスライドが「足元に限定した表現」であるのに対し、マイケルの「ムーンウォーク」は足元だけではなく身体全体を一つの「表現」としているところに違いがあります。

しかしながらほとんどの人は、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を演じている時にマイケルの「足元」、すなわちマイケルがかかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「足の移動の動き」を見ています。

そのため、マイケル・ジャクソンがこの演出の中でもっとも力を入れ、そしてオーディエンスへもっともみせたかった「ムーンウォーク」を「足元に限定した表現」として見ている人はいても「ムーンウォークの表現」として見ている人はほとんどいないことでしょう。

第10回|ムーンウォークの表現

そこでシリーズ最終回となる次回はマイケル・ジャクソンの「ムーンウォークの表現」にスポットを当て、マイケルがムーンウォーク(バックスライド)を表現する上でもっとも力を入れていた「表現」とは何かについて詳しく解説していきたいと思います。

ムーンウォークのやり方|マイケルがもっとも力を入れていた表現とは
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それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。

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