サイドウォークのやり方|横へ移動するムーンウォークの表現

サイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れた応用について解説していきます。
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サイドウォークのやり方|横へ移動するムーンウォークの表現

今回は「サイドウォーク」にスポットを当て、サイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークの応用について解説していきたいと思います。

サイドウォークとは

まずはじめにサイドウォークのおもな系譜を振り返り、それがどのようにしてマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークへとつながっていったのかについて解説します。

おもな系譜

横方向へ移動していくムーンウォークとして知られている「サイドウォーク」は、エレクトリックブガルーズ(Electric Boogaloos)(※1)のクリーピン・シッド(Creepin Sid)(※2)が1979年に当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」へ出演した際に、左右の足を横方向へ交互にスライドしながら移動していく「サイドスライド」を披露したことによって全米のストリートダンサーへと広まっていったスタイルです。

その後1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)で、ブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)(※3)がほうきを使ったソロパフォーマンスシーンでバックスライドからサイドフロート(サイドウォーク)にかけてのフロアムーブ(バックスライド・コンビネーション)を披露したことによって世界中のストリートダンサーへと広まっていきました(※参照:YouTube)。

そしてこれらの系譜を経て、マイケル・ジャクソンが1987年のバッドツアーのShake Your Bodyでサイドムーンウォークを披露したことによって一般に広く知られるようになりました。

マイケル・ジャクソンの表現する「ムーンウォーク」には、ムーンウォーク(バックスライド)、サイドムーンウォーク、その場ムーンウォーク、回転ムーンウォークの4種類の「ムーンウォーク」がありますが、この中で一番最後に登場したのがサイドムーンウォークです。

※1:ブガルー・サム(Boogaloo Sam)(※4)によって1977年に結成された伝説的ダンスクルー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」(Popping)と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」(Boogaloo)の2大ダンススタイルを世に送り出した。なお、結成時の1977年は、エレクトリックブガルーロッカーズ(Electric Boogaloo Lockers)の名称でカリフォルニア州フレズノを本拠地としていたが、1978年にカリフォルニア州ロングビーチへ移転後「エレクトリックブガルーズ」へと改名した。

※2:ストリートダンスの歴史において1978年に全米のTV放送ではじめてバックスライドを披露したレジェンド。代表的な表現には、前述のかかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」や、バックスライドの逆バージョンとして、つま先からかかとにかけて前方へ交互にスライドしながら移動していく「フロントスライド」、左右の足を横方向へ交互にスライドしながら移動していく「サイドスライド」、そして自身のダンサーネームの由来となっている、その場にとどまりながらゆっくりとバックスライドしているようにみせる「クリーピング」がある。なお、エレクトリックブガルーズバージョンのバックスライドはメンバーのティッキン・ウィル(Tickin’ Will)が1975年に考案し、後年その動きを見て学んだクリーピン・シッドが「より滑らかで、より長い距離のバックスライド」の表現へと改良した。

※3:マイケル・ジャクソンが自身の「ムーンウォーク」と「アニメーションダンス」を確立していく過程において影響を受けたレジェンド。1983年から1991年までマイケルのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわった。

※4:エレクトリックブガルーズのリーダー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」を創り出したオリジネーター(考案者)。マイケル・ジャクソンの作品にはショートフィルム「ゴースト」に出演した。

名称の違いと共通点

サイドウォークにはこのスタイルの原点であるエレクトリックブガルーズのクリーピン・シッドの「サイドスライド」、ブガルー・シュリンプの「サイドフロート」、マイケル・ジャクソンの「サイドムーンウォーク」というように、表現者によって異なる名称が用いられています。

ここでそれぞれの「表現コンセプト」の違いについて簡単に整理しておくと、左右の足を横方向へ交互にスライドしながら移動していく様子を表現しているのが「サイドスライド」、床から浮いているかのように横方向へ移動していく様子を表現しているのが「サイドフロート」、月の上を歩いているかのように横方向へ移動していく様子を表現しているのが「サイドムーンウォーク」で、これらに対し、横方向へ移動していくムーンウォークの総称として一般的に用いられているのが「サイドウォーク」です。

このように、サイドスライド、サイドフロート、サイドムーンウォークのそれぞれの「表現コンセプト」については異なっていますが、左右の足の「つま先とかかとの体重移動」および「交差」を利用して横方向へ移動していく「身体の使い方」については共通しています。

マイケルのサイドムーンウォークの表現

前述のとおり、マイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークは、1987年のバッドツアーのShake Your Bodyではじめて登場しました。

表現の進化

1987年のバッドツアー初期の公演都市横浜のShake Your Bodyでは「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していくムーンウォーク」を表現していたマイケル・ジャクソンですが、その後バッドツアー中期の公演都市ウェンブリー(イギリス)のBillie Jeanでは「首と肩を連動して小刻みにアクセントをつけながら横方向へ移動していくムーンウォーク」や1992年のデンジャラスツアー中期の公演都市ブカレスト(ルーマニア)では「ストップモーションアニメーション映画のクリーチャーのような動きをしながら横方向へ移動していくムーンウォーク」を披露し、また1995年のMTV Video Music AwardsのDangerousでは「ロボットのような動きで流れるように横方向へ移動していくムーンウォーク」を披露するなど、公演を重ねていくごとにその表現は進化していきました。

これらのマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークの表現の変遷の背景には、「アニメーションダンス」との深い関係があげられます。

マイケル・ジャクソンが「ムーンウォーク」と共にもっとも重要なダンスと位置づけ、ここぞという見せ場の武器としていたダンスが「アニメーションダンス」です。

マイケル・ジャクソンのアニメーションダンスは1987年のバッドツアーのHuman Natureから登場し、その後1992年のデンジャラスツアー、1996年のヒストリーツアーと公演を重ねていくごとにBillie JeanやStranger In Moscowなどで顕著に表現されるようになっていきましたが、それはサイドムーンウォークの表現が公演を重ねていくごとに「よりアニメーションダンス色の強い表現」へと進化していった時期と重なります。

やり方と応用を理解する

以上を踏まえ、以降では次の2つについて詳しく解説していきたいと思います。

1. サイドウォークの基本

バッドツアー初期バージョンの、「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していくサイドムーンウォーク」をベースとするサイドウォークの足の使い方の基本についての解説。

2. サイドウォークの表現の応用

アニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークの応用についての解説。

1. サイドウォークの基本

ここからはバッドツアー初期バージョンの、「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していくサイドムーンウォーク」をベースとするサイドウォークの足の使い方の基本について解説していきます。

今回の解説では、私の表現する次のサイドウォークの動画を参考動画としています。

解説:この動画の表現について

1987年のバッドツアー初期の公演都市横浜のShake Your Bodyで披露したマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークの「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していく表現」は、それを構成するおもな「表現の要素」に、1979年に音楽番組「ソウルトレイン」でエレクトリックブガルーズのクリーピン・シッドが披露した、左右の足を横方向へ交互にスライドしながら移動していくサイドスライドの表現と、1983年から1991年までマイケルのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわったブガルー・シュリンプの、床から浮いているかのように横方向へ移動していくサイドフロートの表現の各種要素が読み取れることから、マイケルはこれらの「表現の要素」を抽出し再構築することによって、マイケルの解釈によるマイケルバージョンの「横方向へ滑らかに移動していくサイドウォーク」、すなわち「月の上を滑らかに横方向へ移動していくムーンウォーク(サイドムーンウォーク)」を表現していることがわかります。

これを踏まえ、この動画で私が表現しているサイドウォークは、1987年のバッドツアー初期のShake Your Bodyでマイケル・ジャクソンが披露したサイドムーンウォークの「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していく表現」をベースに、1979年に音楽番組「ソウルトレイン」でエレクトリックブガルーズのクリーピン・シッドが披露したサイドスライドの「左右の足を横方向へ交互にスライドしながら移動していく表現」と、1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)でブガルー・シュリンプが披露したサイドフロートの「床から浮いているかのように横方向へ移動していく表現」がおもな構成要素であり、これらの表現から「表現の要素」を抽出し再構築することによって、私の解釈による私バージョンの「横方向へ滑らかに移動していくサイドウォーク」を表現しています。

サイドウォーク1歩目

それではサイドウォーク1歩目の解説に入ります。

サイドウォーク1歩目のやり方①

ここではスタートポジションからサイドウォーク1歩目へ入る手前の動作について解説します。

スタートポジション

両足を肩幅以内に開いて立ちます。

つま先は外側へ軽く開き「逆ハの字」の形とし、左足のつま先を立てます。

この位置がスタートポジションです(左0・右0)。

左足

かかとを下ろして床に着地します(1)。

右足

左足の1の動きと同時に、右足はかかとを軸に時計回りへ回転します(1)。

体重

動作後、体重は左足の足の裏全体と右足のかかとにかかっています。

サイドウォーク1歩目のやり方②

ここではサイドウォーク1歩目へ入る直前の「逆ハの字」の形からサイドウォーク1歩目へ入る「ハの字」の形へ変形していく動作について解説します。

左足

かかとを軸に時計回りへ回転します(2)。

右足

左足の2の動きと同時に、右足はつま先を支点として反時計回りへ回転します(2)。

この時、両足はつま先を内側に寄せた「ハの字」の形となります。

体重

動作後、体重は左足の足の裏全体と右足のつま先にかかっています。

サイドウォーク1歩目のやり方③

ここではサイドウォーク1歩目の動作から、1歩目をおえた直後の動作について解説します。

左足

左足を右足へ引き寄せるようにつま先を立てながら移動します。

この移動中に左足はつま先を支点として反時計回りへ回転しながら右足へ引き寄せていきます(3)。

右足

左足の3の動きと同時に、右足は移動してくる左足をかわすように、かかとを軸に時計回りへ回転します(3)。

この時、両足はつま先を外側に開いた「逆ハの字」の形となります。

体重

動作後、体重は左足のつま先と右足の足の裏全体にかかっています。

サイドウォーク1歩目の動作の流れ

ここまでがサイドウォーク1歩目の動作です。

この1歩目の動作の流れをスローモーションで示したものが次の動画となります。

サイドウォーク2歩目

ここからはサイドウォーク2歩目の解説に入ります。

サイドウォーク2歩目のやり方①

ここではサイドウォーク1歩目をおえた直後から2歩目に入る動作について解説します。

左足

つま先を立てている状態からかかとを下ろして床へ着地します(4)。

右足

左足の3の動きと同時に、右足を4の方向へ向けて移動します。

この時、右足のつま先を立てながら移動していきます(4)。

体重

動作後、体重は左足の足の裏全体と右足のつま先にかかっています。

サイドウォーク2歩目のやり方②

ここではサイドウォーク2歩目へ入る直前の「逆ハの字」の形からサイドウォーク2歩目へ入る「ハの字」の形へ変形していく動作について解説します。

左足

左足を右足へ引き寄せるように移動します。

この移動中に左足はつま先を支点として時計回りへ回転しながら右足へ引き寄せていきます(5)。

右足

左足の5の動きと同時に、右足はかかとを下ろし、つま先を支点として反時計回りへ回転します(5)。

この時、両足はつま先を内側に寄せた「ハの字」の形となります。

体重

動作後、体重は左足のつま先と右足のつま先にかかっています。

サイドウォーク2歩目のやり方③

ここではサイドウォーク2歩目の動作から、2歩目をおえた直後の動作について解説します。

左足

左足を右足へ引き寄せるようにつま先を立てながら移動します。

この移動中に左足はつま先を支点として反時計回りへ回転しながら右足へ引き寄せていきます(6)。

右足

左足の6の動きと同時に、右足は移動してくる左足をかわすように、かかとを軸に時計回りへ回転します(6)。

この時、両足はつま先を外側に開いた「逆ハの字」の形となります。

体重

動作後、体重は左足のつま先と右足の足の裏全体にかかっています。

サイドウォーク2歩目の動作の流れ

ここまでがサイドウォーク2歩目の動作です。

この2歩目の動作の流れをスローモーションで示したものが次の動画となります。

動作のまとめ

以上がバッドツアー初期バージョンの、「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していくサイドムーンウォーク」をベースとするサイドウォークの足の使い方の基本についての解説でした。

3歩目以降をおこなう場合は「サイドウォーク2歩目のやり方①」の4の動作からおこないます。

最後に、今回解説したサイドウォーク1歩目と2歩目の動作の流れを次のスローモーション動画でおさらいしましょう。

2. サイドウォークの表現の応用

ここからはアニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークの応用について解説していきます。

前述のとおり、1987年のバッドツアーのShake Your Bodyではじめて登場したマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークは、初期の公演都市横浜のShake Your Bodyでは「月の上を歩いているかのように横方向へ滑らかに移動していくムーンウォーク」を表現していましたが、その後バッドツアー中期の公演都市ウェンブリー(イギリス)のBillie Jeanでは「首と肩を連動して小刻みにアクセントをつけながら横方向へ移動していくムーンウォーク」や1992年のデンジャラスツアー中期の公演都市ブカレスト(ルーマニア)では「ストップモーションアニメーション映画のクリーチャーのような動きをしながら横方向へ移動していくムーンウォーク」を披露し、また1995年のMTV Video Music AwardsのDangerousでは「ロボットのような動きで流れるように横方向へ移動していくムーンウォーク」を披露するなど、公演を重ねていくごとにその表現は進化していきました。

これらのマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークの表現の変遷の背景には、「アニメーションダンス」との深い関係があげられます。

マイケル・ジャクソンが「ムーンウォーク」と共にもっとも重要なダンスと位置づけ、ここぞという見せ場の武器としていたダンスが「アニメーションダンス」です。

マイケル・ジャクソンのアニメーションダンスは1987年のバッドツアーのHuman Natureから登場し、その後1992年のデンジャラスツアー、1996年のヒストリーツアーと公演を重ねていくごとにBillie JeanやStranger In Moscowなどで顕著に表現されるようになっていきましたが、それはサイドムーンウォークの表現が公演を重ねていくごとに「よりアニメーションダンス色の強い表現」へと進化していった時期と重なります。

2つのアニメーションスタイル

マイケル・ジャクソンが自身のアニメーションダンスの表現を確立していく過程において影響を受けたスタイルには2つの種類があり、そのオリジネーター(考案者)はブガルー・シュリンプとポッピン・タコ(Pop N Taco)の2人です。

ブガルー・シュリンプについて

ブガルー・シュリンプは1983年から1991年までマイケル・ジャクソンのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわったレジェンドです。

そのブガルー・シュリンプが創り出したスタイルが「リキッドアニメーションスタイル」で、「可動範囲の制限を解放したロボットの動き」の要素と、カートゥーンアニメーションの「パラパラ漫画を細かく滑らかに映し出した動き」の要素を組み合わせることによって表現される「流れるように動くロボット」に特徴があります。

映画「ブレイクダンス」のブガルー・シュリンプの「ほうきを使ったソロパフォーマンス」シーンでは、「ほうきを左右に振りながら掃除をするしぐさをモチーフとした表現」の部分でリキッドアニメーションスタイルを表現しています。

これを踏まえ、マイケル・ジャクソンがリキッドアニメーションスタイルの「表現の要素」を取り入れて表現しているサイドムーンウォークは、1995年のMTV Video Music AwardsのDangerousで登場し、その後1995年公開のショートフィルム「Scream」や1996年のヒストリーツアーのStranger In Moscow、Billie Jeanなどへ展開していった「ロボットのような動きで流れるように横方向へ移動するサイドムーンウォーク」です。

ポッピン・タコについて

一方、ポッピン・タコは1983年から1997年までマイケル・ジャクソンのパーソナルダンストレーナー(クリエイティブコンサルタント)として、ポッピング(Popping)(※5)とアニメーションスタイルのすべてをマイケルに伝授したレジェンドです。

マイケル・ジャクソンの作品にはディズニーアトラクション体感型3D映画「キャプテンEO」(1986年)、映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminal(1988年)、ショートフィルム「ゴースト」(1996年)などに出演しています。

そのポッピン・タコが創り出したスタイルが「ストップモーションアニメーションスタイル」で、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)(※6)の「クリーチャー」の要素と、「ストップモーションアニメーションの動き」の要素を組み合わせることによって表現される「滑らかさの中に細かくカクカクした独特な動き」に特徴があります。

映画「ブレイクダンス」のポッピン・タコの「ヴェニスビーチの登場」シーンでは、「投球ポーズをモチーフとした、小刻みに分割するモーションの表現」の部分でストップモーションアニメーションスタイルを表現しています。

これを踏まえ、マイケル・ジャクソンがストップモーションアニメーションスタイルの「表現の要素」を取り入れて表現しているサイドムーンウォークは、1992年のデンジャラスツアーのBillie Jeanで登場した「ストップモーションアニメーション映画のクリーチャーのような動きをしながら横方向へ移動するサイドムーンウォーク」です。

※5:曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現するスタイル。エレクトリックブガルーズのブガルー・サムが1976年に創り出した。

※6:ストップモーションアニメーションを取り入れた数々の特撮映画を生み出したレジェンド。ストップモーションアニメーションとは、内部に骨格を持つ可動式ミニチュア人形の動くさまを1コマずつ変化させて撮影することによって、再生するとその人形がまるで生きているかのような動きを表現することができる、特撮技術を駆使した実写アニメーションのこと。ポッピン・タコの代表的表現の1つに一つ目巨人の「サイクロプス」(Cyclops)があるが、これはレイ・ハリーハウゼンが手がけた1958年公開の映画「シンバッド7回目の航海」(The 7th Voyage of Sinbad)に登場するサイクロプスに影響を受けて表現している。

不可欠なこと

このように、公演を重ねていくごとに進化していったマイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークの表現の背景には「アニメーションダンス」との深い関係があります。

これを踏まえ、私たちがアニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークを表現する際は、マイケル・ジャクソンのサイドムーンウォークには「リキッドアニメーションスタイルを取り入れたサイドムーンウォーク」と「ストップモーションアニメーションスタイルを取り入れたサイドムーンウォーク」の2種類の表現があり、そのことを理解した上で各種アニメーションスタイルを取り入れた「自分の表現としてのサイドウォーク」を表現することが不可欠であると言えるでしょう。

参考:アニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークの表現

参考までに、私の表現する各種アニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークを紹介します。

リキッドアニメーションスタイルのサイドウォーク

この動画で私が表現しているサイドウォークは、1987年のバッドツアー初期のShake Your Bodyでマイケル・ジャクソンが披露したサイドムーンウォークの「月の上を歩いているかのように横方向へ移動していく表現」と、ブガルー・シュリンプのリキッドアニメーションスタイルの「流れるように動くロボットの表現」、および1995年のMTV Video Music AwardsのDangerousでマイケルが披露した「ロボットのような動きで流れるように横方向へ移動していくサイドムーンウォークの表現」がおもな構成要素であり、これらの表現から「表現の要素」を抽出し再構築することによって、私の解釈による私バージョンの「リキッドアニメーションスタイルのサイドウォーク」を表現しています。

ストップモーションアニメーションスタイルのサイドウォーク

この動画で私が表現しているサイドウォークは、1987年のバッドツアー初期のShake Your Bodyでマイケル・ジャクソンが披露したサイドムーンウォークの「月の上を歩いているかのように横方向へ移動していく表現」と、ポッピン・タコのストップモーションアニメーションスタイルの「滑らかさの中に細かくカクカクした独特な動きの表現」、および1992年のデンジャラスツアー中期のBillie Jeanでマイケルが披露した「ストップモーションアニメーション映画のクリーチャーのような動きをしながら横方向へ移動するサイドムーンウォークの表現」がおもな構成要素であり、これらの表現から「表現の要素」を抽出し再構築することによって、私の解釈による私バージョンの「ストップモーションアニメーションスタイルのサイドウォーク」を表現しています。

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「大切なこと」とは

以上がサイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れたサイドウォークの応用についての解説でした。

周知のとおり、1983年のモータウン25(※7)でムーンウォーク(バックスライド)を初披露したことに端を発するマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」は、その後、その場ムーンウォークや回転ムーンウォーク、そしてサイドムーンウォークへと展開し、いまでは誰もがやってみたいと思った時にこれら「ムーンウォーク」を「ハウツー」として習えるところまで普及しました。

それから数十年が経過したいま、まわりを見わたすと、「ムーンウォーク」を教える側、それを習う側をはじめ、「ムーンウォーク」を表現する側、それを見るオーディエンス側のほとんどの人が、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を型に落とし込んだ「ハウツー」やマイケルの「ムーンウォーク」をそのままトレースした「完全コピー」で満足してしまうようになってしまいました。

そしていつのまにか、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を完全コピーすることが「ムーンウォーク」を習得する目的となり、マイケルの「ムーンウォーク」へできるだけ近づけて再現できる人が「上手い」と評価され、ずれていると容赦なく「下手」と評価されるようになってしまいました。

端的に言えば、私たちは数十年間もの長い間、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」から学ぶべき方向性を見誤っていたと言ってよいでしょう。

なぜなら、クリエイティブの観点からすると、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の完全コピーはマイケルの「二番煎じ」であり、表現者として「新しい表現」、「価値観」を何も提示していないからです。

※7:マイケル・ジャクソンがジャクソン5時代に所属していたレコードレーベル「モータウン」の設立25周年を記念して開催された音楽の祭典。そのハイライトは1983年5月16日に全米でTV放送された。祭典の正式名称は「Motown25: Yesterday, Today, Forever」(モータウン25:昨日、今日、そして永遠に)。

本当の課題とは

本来マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」から私たちが学ぶべきこととは、クリエイティブにおける「既存の表現を解釈する考え方」、「オリジナリティーを提示する考え方」、「新しい価値観を創り出す考え方」などを通して、マイケルの表現する「ムーンウォーク」からクリエイティブの「本質」を見極め、自分の表現としてつかみ取ることにあります。

なぜなら私たちが「ムーンウォーク」を表現する上で取り組むべき「本当の課題」とは、マイケル・ジャクソンの表現する「ムーンウォーク」から「クリエイティブの本質」を学び取り、「自分の表現としてのムーンウォーク」を提示することによってマイケルの「ムーンウォーク」を乗り越え、独創的に新しく展開していくことだからです。

マイケルを乗り越える方法

これまでマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を乗り越えるために先人がおこなってきたことは、マイケルの「ムーンウォーク」をそのまま完全コピーし、その「技術」に対して追いつき追い越せということでした。

しかしこのやり方には、たとえマイケル・ジャクソンよりも精度の高い「ムーンウォーク」を身につけて「技術」で追い抜いたとしても、結局はマイケルがたどった道をそのままなぞっただけであり、マイケルの「二番煎じ」にしかならず、乗り越えたことにはならないという限界がありました。

私たちはマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を「技術の観点」からではなく「クリエイティブの観点」からとらえ、マイケルの表現する「ムーンウォーク」から「クリエイティブの本質」を学び取り、乗り越えるべきだったのです。

そこで次に紹介するシリーズの「マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越える方法」では、マイケルの「ムーンウォーク」を乗り越えるための第一歩として「バックスライド」を取り上げ、マイケルのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための考察と方法を全5回にわたり解説していきます。

第1回から順に読み進めていくことによって、これまで私たちがマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)に対して無意識に抱いていた「マイケルを乗り越えることなんてできるはずがない」に対する「勘違い」、「思い込み」、「盲点」を段階的に解放し、最終的にはマイケルのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための「一つの答え」を解説していく構成としています。

また、内容は「バックスライド」を例に解説していますが、「クリエイティブの本質」をテーマとしていますので、すべての「ムーンウォーク」はもとより、ひいてはすべてのストリートダンスにも通底する内容となっています。

マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越える方法
マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越えるための考察と方法を全5回シリーズで解説します。

第1回|誰がムーンウォークを教え、そして授けたのか

シリーズ第1回目は、「誰が本当の意味でマイケルにムーンウォークを教え、そして授けたのか」について解説します。

1988年に出版されたマイケル・ジャクソンの自伝「ムーンウォーク」でマイケルは、ムーンウォーク(バックスライド)を教えてくれたのは3人の子供たちで(※原文は「three kids」)、彼らから基本を授かったとしか語っておらず、誰からムーンウォーク(バックスライド)を教わったのかは明らかにしないままこの世を去りました。

マイケル・ジャクソンへムーンウォーク(バックスライド)を教えた人物が誰なのかについては諸説ありますが、マイケルが1983年のモータウン25でムーンウォーク(バックスライド)を初披露する前に、少なくとも3人のキッズ(kids:若者たち)と3人の子供たち(children)に出会っていることがわかっています。

当時マイケル・ジャクソンが構想していたことは、既存のバックスライドとは違う「新しい価値観」としての新しいバックスライドをクリエイトする(創り出す)ことでした。

自伝「ムーンウォーク」では、ムーンウォーク(バックスライド)を教えてくれたのは3人の子供たちで、彼らから基本を授かったと語ることによって、何の問題もなくさらりとやってのけたかのように演じているマイケル・ジャクソンですが、実際はムーンウォーク(バックスライド)をクリエイトしていく過程において「表現者」としての悩みと苦労がありました。

本解説では、3人のキッズ(kids:若者たち)と3人の子供たち(children)との出会いを通じてマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の表現の確立に貢献した人物のうち、マイケルが影響を受けた2人のレジェンドに着目しています。

その2人のレジェンドとは、ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)とブガルー・シュリンプです。

以上を踏まえ第1回目は、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を初披露した1983年のモータウン25前後のおもな出来事を時系列で見ていくことによって、誰が本当の意味でマイケル・ジャクソンにムーンウォーク(バックスライド)を教え、誰が本当の意味でそれを授けたのかについて考察していきたいと思います。

誰が本当の意味でマイケルにムーンウォークを教え、そして授けたのか
マイケルが構想していたことは既存のものとは違う新しいバックスライドをクリエイトすることでした。

それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。

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