アニメーションダンスの練習|おさえておきたい「上達するための練習」とは

アニメーションダンスの「全体像」の基礎から練習方法までを全12回にわたり解説していくシリーズの第11回目です。
アニメーションダンス講座|読めばわかる基礎と練習方法
アニメーションダンスの「全体像」の基礎から練習方法までを全12回シリーズで解説します。
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アニメーションダンスの練習|おさえておきたい「上達するための練習」とは

これまで解説してきた10回の解説によって、アニメーションダンスの「全体像」の基礎をとらえることができたと思います。

この「全体像」の基礎をとらえた上で各種練習を積み重ねていけば、あなたはきっと何かしらの「アニメーション」の使い手となっていることでしょう。

しかしながら「練習」といっても何をどのように練習したらいいのかわからない人も少なくないのではないでしょうか。

そこでシリーズ第11回目の今回は「アニメーションダンスの練習」にスポットを当て、アニメーションダンスを習得する上でおさえておきたい「上達するための練習」について詳しく解説していきたいと思います。

「上達するための練習」とは

「上達するための練習」には、おもに次の2つの練習があります。

1. 「技術」が上達するための練習

2. 「表現」が上達するための練習

1. 「技術」が上達するための練習

このうち1の「技術」が上達するための練習は、多くの人が「上達するための練習」ととらえて実践している練習です。

この「技術」が上達するための練習、すなわち、アニメーションダンスを構成する各種スタイルのテクニックや技の「スキルを習得して磨く練習」は、スキルの向上に直結した最短ルートの練習であり、アニメーションダンスを習得する上で必要不可欠な練習であると言えるでしょう。

しかしながらこの「技術」が上達するための練習は、多くの人が「ある共通認識」を持ってしまう練習であるとも言えます。

それは、技術の上達が表現の上達につながる、と認識して「練習」してしまうことです。

「上達するための練習」の観点からすると、「技術」と「表現」の練習は必ずしも一緒ではありません。

なぜなら技術の上達に比例して表現の上達が実感できるのは最初のうちだけで、大抵の人は技術を優先して練習しているといずれ限界を迎えることになるからです。

そのため本解説では、1の「技術」が上達するための練習と2の「表現」が上達するための練習を分けてとらえ、それぞれのレベルを底上げすることによって「上達する」と考えています。

2. 「表現」が上達するための練習

これを踏まえ、それでは2の「表現」が上達するための練習とはどのような練習なのでしょうか。

それは、表現を「鑑賞する」練習、です。

表現を「鑑賞する」練習

多くの人が表現を「鑑賞する」と聞いて思い浮かべることとは、表現を見て感じたことを「かっこいい・かっこわるい」、「上手い・下手」、「好き・嫌い」といった判断基準によって、直感的に「評価する」ことでしょう。

しかしながら本解説では、表現を見て感じたことを上述のような判断基準によって直感的に「評価する」ことが表現を「鑑賞する」こととは考えていません。

なぜならその「鑑賞する」は、視覚を通して見た表現をそのまま個人の主観的感覚や嗜好(しこう)にもとづく「感想」として直感的に評価しているにすぎず、「自分の表現」に反映して活かすことにはつながらないからです。

そこで本解説が考える、表現を「鑑賞する」練習とはどのような「鑑賞」の練習のことなのかということになりますが、それは、表現を「読み取る」練習のこと、です。

表現を「読み取る」練習

表現を「読み取る」練習は、ダンスを鑑賞する際に「この表現はどういうところからインスピレーションを受けているのか」を考えながら「表現のルーツ」を読み取ることによって自分の「解釈」を導き出し、その解釈をもとに「自分の表現」へと反映して活かしていくことを目的とした練習です。

この表現を「読み取る」練習には、おもに次の2つの練習があります。

01. 「表現のルーツ」を読み取る練習

02. 表現を「解釈する」練習

01. 「表現のルーツ」を読み取る練習

表現を「読み取る」練習の1つ目は、「表現のルーツ」を読み取る練習です。

ダンスに限らずどの分野の表現も、表現が「表現」として成立するためには条件があります。

それは、表現の中に「その道の歴史の、先行する既存の表現からの引用」を連想させるいくつもの「表現の要素」、すなわち「表現のルーツ」がちりばめられていることです。

わかりやすい事例として、ここでは前回(第10回)解説のマイケル・ジャクソンを取り上げます。

マイケル・ジャクソンは、ダンスの構成の中でポッピングやアニメーションなどに属さない「マイケル・ジャクソンスタイル」をメインスタイルとした上で、マイケルの「表現者の個性」として、「アニメーション」とそれに関連する各種スタイルを取り入れて表現しています。

そしてマイケル・ジャクソンの「アニメーション」の表現には、自身が影響を受けたポッピン・タコ(Pop N Taco)(※1)とブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)(※2)の「表現の要素」がちりばめられており、その表現を「鑑賞する」側の私たちはそれを「表現のルーツ」として読み取ることができます。

同様にポッピン・タコもブガルー・シュリンプも、それぞれの表現には各自影響を受けた「表現の要素」がちりばめられており、その表現を「鑑賞する」側の私たちはそれを「表現のルーツ」として読み取ることができます。

これに対し、多くの人は、表現者が自由に解釈し、内側からわき上がってくる情熱を、感性のおもむくままに自由に表現したものがアニメーションダンスの「表現」であると考えています。

この考え方も表現に対する「価値観の一つ」ですので、表現者個人の、表現に対する「価値観の選択の自由」においてその方向性でアニメーションダンスの表現を追求していくのもいいと思います。

この場合1点「留意しておきたいこと」は、表現者本人が意図していなくても表現が「表現」として成立する条件を踏まえたパフォーマンスをやってのけることができるその人は、「偶然の一致」としてたまたまできただけか、あるいは自分の感性のおもむくままに自由に表現することのできる本当の「天才的表現者」である可能性が高い、ということです。

つまり、誰もができるものではない、ということは理解しておいた方がよいでしょう。

※1:マイケル・ジャクソンが自身の「アニメーションダンス」の表現を確立していく過程においてブガルー・シュリンプと共に影響を受けたレジェンド。「ストップモーションアニメーションスタイル」、「アニマトロニクススタイル」のオリジネーター。1983年から1997年までマイケルのパーソナルダンストレーナー(クリエイティブコンサルタント)として、ポッピングとアニメーションスタイルのすべてをマイケルに伝授した。また、マイケルの作品にはディズニーアトラクション体感型3D映画「キャプテンEO」(1986年)、映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminal(1988年)、ショートフィルム「ゴースト」(1996年)などに出演した。

※2:マイケル・ジャクソンが自身の「ムーンウォーク」と「アニメーションダンス」を確立していく過程において影響を受けたレジェンド。「リキッドアニメーションスタイル」のオリジネーター。1983年から1991年までマイケルのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわった。

大事なこと①

この「表現のルーツ」を読み取る練習で、中には自分が読み取った「表現のルーツ」の結果にこだわる人もいるかもしれませんが、ここでおさえておきたい「重要なこと」は、間違っている、間違っていないは重要ではない、ということです。

なぜなら「表現に答えはない」からです。

ある人は、表現者の意図を超えたところから「表現のルーツ」を読み取る人もいることでしょう。

またある人は、時間をおいて同じ表現を見た時に、前回よりも「表現のルーツ」を読み取る数が多くなっている人もいることでしょう。

その一方で、従来の「かっこいい・かっこわるい」、「上手い・下手」、「好き・嫌い」といった、個人の主観的感覚や嗜好(しこう)にもとづく「感想」として直感的に評価することに慣れすぎてしまった人にとっては、この「表現のルーツ」を読み取る練習を「難しい」と感じてしまう人もいることでしょう。

大事なことは、「この表現はどういうところからインスピレーションを受けているのか」について興味を持つことです。

02. 表現を「解釈する」練習

表現を「読み取る」練習の2つ目は、表現を「解釈する」練習です。

ダンスのしくみ、やり方、技術に関する「すぐに役立つテクニック」の情報があふれているいまの時代、ダンスは「コピペ感覚」(※3)で簡単にできてしまいます。

アニメーションダンスも同様に、曲の構成に合わせて各種スタイルを「振り」としてコピペし当てはめていくだけで簡単にできるようになりました。

しかしながら、この「すぐに役立つテクニック」を多くの人が追い求めた結果、いわゆる「上手い」と言われる人は増えましたが、それと共に、アニメーションダンスが「ハウツー」として片づけられ、本質的な「あること」を忘れてしまった人も増えました。

その本質的な「あること」とは、アニメーションダンスが「表現」である、ということです。

クリエイティブの観点からすると、ダンスが「コピペ感覚」で簡単にできてしまういまの時代において、コピペのネタ元の「振り」をお手本どおりにそのまま完全コピーし完全再現する練習はあまり重要ではないと考えた方がよいでしょう。

なぜなら、それよりも「自分の表現」をどのように「自分のオリジナリティー」として打ち出せるのかを試行錯誤しながら実践していく練習の方が重要だからです。

このことはつまり、本当の「天才的表現者」ではない私たちは、すぐれたアニメーションダンスの表現の中には「アニメーションダンスの歴史の、先行する既存の表現からの引用」を連想させるいくつもの「表現の要素」が「表現のルーツ」として読み取れるようになっていることを理解し、その「表現のルーツ」を読み取ることによって自分の「解釈」を導き出し、その解釈をもとに「自分の表現」へと反映して活かしていく必要がある、ということです。

これを踏まえ、「自分のオリジナリティー」を打ち出す練習、すなわち自分の「解釈」による「アニメーションダンスの表現とは何か」を導き出し、その解釈をもとに「自分の表現」を確立していく練習のことを本解説では、表現を「解釈する」練習、と呼んでいます。

※3:ここでは「即席的」意味合い。「コピペ」とはコンピュータ上でデータを複製して貼りつける「コピー&ペースト」の略語のこと。

表現を「解釈する」練習方法

表現を「解釈する」練習の一番のメリットは、「イマジネーション(想像力)を生み出せること」です。

このイマジネーションが「自分の表現」の確立へとつながります。

それではこの表現を「解釈する」練習にはどのような練習方法があるのでしょうか。

表現を「解釈する」練習には、おもに次の2つの練習があります。

01. 自分の「解釈」として導き出す練習

読み取った「表現のルーツ」をもとに「この表現はこういうところからインスピレーションを受けているのではないか」ということについて自分の頭で考え、自分の「解釈」として導き出していく練習。

02. 「自分の表現」へと反映して活かしていく練習

自分の「解釈」を単なる「妄想」として終わらせるのではなく、その解釈をもとに、どのように「自分の表現」へと反映して活かしていくことができるのかを考え試行錯誤しながら実践していく練習。

これを踏まえ、このことをアニメーションダンスの話に置き換えて考えると具体的に何から「解釈する」練習をしていけばよいのかということになりますが、あまり堅苦しく考える必要はありません。

まずは「自分が興味ある表現者の表現を自分なりに解釈していく練習」からはじめてみるとよいでしょう。

参考までに、本講座ではこれまで「アニメーションダンス型」のブガルー・シュリンプ、「ポッピング型」のポッピン・タコ、これら2人の「表現の要素」を取り入れて独創的に新しく展開した「イノベーター(革新者)型」のマイケル・ジャクソンの3人を取り上げて解説しました。

何から着手してよいのかわからない場合は、この3人の「表現の特徴」について解釈する練習からはじめてみましょう。

大事なこと②

また、この表現を「解釈する」練習でも、中には自分なりの「解釈」として導き出したその「解釈」の結果にこだわる人がいるかもしれませんが、間違っている、間違っていないは重要ではありません。

なぜなら「表現に答えはない」からです。

大事なことは、表現のインスピレーションのルーツ、すなわち「表現のルーツ」を読み取ることによって、その表現に対する自分なりの「解釈」を自分の頭で考え、自分の「解釈」として導き出していくことを面倒くさがらずに実践することです。

おさえておきたいこと

これに関連し、ここで一つ「おさえておきたいこと」があります。

それは、これまで本講座で展開してきた解説内容は「絶対」でもなく、また「すべて」でもなく、人によっては「違う解釈」の見解も十分にありうる、ということです。

たとえば本講座で取り上げたブガルー・シュリンプ、ポッピン・タコ、マイケル・ジャクソンの解説は、あくまで私の解釈による私バージョンの「解釈」によって解説していると考えた方がよいでしょう。

また、これまで解説してきた「アニメーションダンス講座」すべての解説は、私の解釈による私バージョンの「解釈」によって解説していると言ってよいでしょう。

つまり何が言いたいのかというと、私とは違う解釈の、あなたの解釈によるあなたバージョンのアニメーションダンスの表現があるはずで、それを「自分のオリジナリティー」として打ち出すことができる、ということです。

たとえ自分のアニメーションダンスのとらえ方やそれに関する「解釈」が間違っていたとしても、アニメーションダンスを表現するための「ルール」を踏まえた上で「自分の表現」へと反映して活かすことができているのであれば、それは自分オリジナルの「クリエイティビティ(創造性)の武器」として前向きにとらえていきましょう。

参考までに、少なくとも私の「表現」は、これまで展開してきた私の解釈による私バージョンの「解釈」をもとに成立しています。

まとめ

以上を踏まえ、「上達するための練習」についてまとめると次のとおりです。

1. 「上達するための練習」とは

おもに次の2つの練習がある。

-01. 技術」が上達するための練習

-02. 「表現」が上達するための練習

※「表現」が上達するための練習とは、表現を「鑑賞する」練習のことであり、それは表現を「読み取る」練習のこと。

2. 表現を「読み取る」練習とは

ダンスを鑑賞する際に「この表現はどういうところからインスピレーションを受けているのか」を考えながら「表現のルーツ」を読み取ることによって自分の「解釈」を導き出し、その解釈をもとに「自分の表現」へと反映して活かしていくことを目的とした練習。

-◇大事なこと①

「この表現はどういうところからインスピレーションを受けているのか」について興味を持つこと。

-◇大事なこと②

表現のインスピレーションのルーツ、すなわち「表現のルーツ」を読み取ることによって、その表現に対する自分なりの「解釈」を自分の頭で考え、自分の「解釈」として導き出していくことを面倒くさがらずに実践すること。

次回について

以上が「アニメーションダンスの練習」についての解説でした。

今回の解説によって、アニメーションダンスを「上達するための練習」について理解することができたと思います。

この「練習」について理解できた人は、次の段階として、この「練習」をどうやって「自分の表現」へと反映し活かしていけばよいのか、ということを考えていることでしょう。

結論から先に言うと、それは「ダンスの構成」です。

第12回|ダンスの構成

そこでシリーズ最終回となる次回は「アニメーションダンスの構成」にスポットを当て、3つの実例を交えながら詳しく解説していきたいと思います。

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それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。

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