マイケル・ジャクソンのアニメーションダンス|主要6スタイルを解説

アニメーションダンスを習得するポイントを全12回にわたって解説していくシリーズの第7回目です。

マイケル・ジャクソンのアニメーションダンス|主要6スタイルを解説

前回の解説

前回(第6回)の解説では、オールドスクールアニメーションスタイルのオリジネーターであるポッピン・タコ(Pop’N Taco)にスポットを当てて解説しました。

【第6回】ポッピン・タコとアニメーションスタイル

ポッピンタコの凄さ|そのアニメーションダンスから学ぶべきポイント
ポッピン・タコがダンスの構成の中で各種スタイルをどのように使い表現しているのかについて解説します。

第7回目となる今回は、マイケル・ジャクソンのアニメーションダンスについて解説します。

マイケルが影響を受けたオリジネーター

マイケル・ジャクソンが自身の革新的ダンスを確立するために最も重要なダンスと位置づけ、「ムーンウォーク」と共にここぞという見せ場の武器としていたダンスが「アニメーションダンス」です。

マイケル・ジャクソンのアニメーションダンスは、1987年のバッドツアーから登場し、その後の1992年のデンジャラスツアー、1996年のヒストリーツアーと公演を重ねるごとに顕著に表現されるようになります。

そのマイケル・ジャクソンのアニメーションダンスのクリエイティブの方向性を決定づける事に大きな影響を与えた人物は、リキッドアニメーションスタイル(※1)のオリジネーターのブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)とストップモーション・アニメーションスタイル(※2)のオリジネーターのポッピン・タコ(Pop’N Taco)の2人です。

中でもマイケル・ジャクソンのアニメーションダンスは、1983年から1997年までパーソナルダンストレーナー(クリエイティブコンサルタント)としてマイケルと関わっていたポッピン・タコの影響を色濃く反映したスタイルとなっています。

※1:ロボットの可動範囲を解放し、カートゥーン・アニメーションのパラパラ漫画を細かく滑らかに映し出した動きを組み合わせた”流れるように動くロボット”を表現するダンススタイルの事

※2:レイ・ハリーハウゼンの創り出したクリーチャーの要素とストップモーション・アニメーションの動きの要素を融合したダンススタイルの事

マイケルのアニメーション表現の特徴と主要スタイル

マイケル・ジャクソンが自身のダンススタイルを創り上げる上で行った方針は、偉大なアーティスト達を手本として学び取り、様々なダンススタイルを組み合わせる事によってオリジナルのスタイルとした事でした。

そのため厳密に言うと、マイケル・ジャクソンはダンスの構成の中にアニメーションダンスやアニメーションスタイルのパートを設けて表現するのではなく、タップダンスやジャズダンスなどの他の様々なダンススタイルから要素を必要な時に”サンプリング”して表現しているのと同様に、アニメーションの要素も必要な時にサンプリングする事によって表現しています。

これを踏まえ、マイケル・ジャクソンが自身のパフォーマンスでアニメーションの要素を使って表現する主要スタイルは、ポッピング、ダイム・ストップ、ティッキング、コブラ、スネーク、アニメーション(ストップモーション・アニメーションスタイル)の6スタイルです。

各種スタイルの解説

ポッピング

マイケル・ジャクソンが表現するポッピングは、ポッピングの持つ”身体の各部位を弾く”という表現の特徴を利用した「アニメーション」のパートの要素として使う表現と、他のスタイルとポッピングを組み合わせて使う表現の2種類があります。

代表的なパフォーマンスはデンジャラスツアー(1992年)やヒストリーツアー(1996年)のBillie Jeanと、ヒストリーツアー(1996年)のStranger In Moscowです。

Billie Jeanでは、ブレイクダウン終盤でアニメーションスタイル(ストップモーション・アニメーションスタイル)の中にポッピングの要素を織り交ぜる事によってストップモーション・アニメーション映画に登場するクリーチャーのような表現を行っています。

また、Stranger In Moscowではサイドウォークとポッピングの各スタイルを組み合わせ、サイドウォークする際にポッピングの要素をランダムに入れて移動する事でサイドウォークしながら移動するロボットの表現を行っています。

参考

ポッピングを「アニメーション」のパートの要素として使う表現と、他のスタイルと組み合わせて使う表現の参考例です。

この動画と同じ振りをマイケル・ジャクソンは行ってはいませんが、ストップモーション・アニメーションスタイルの中にポッピングの要素を入れたクリーチャーの表現や、サイドウォークへポッピングの要素をランダムに入れて表現する身体の使い方は共通しています。

ダイム・ストップ

ダイム・ストップはポッピングから派生したスタイルで、ポッピングの”身体を弾く動き”に対して“身体をピタッと止める動き”として表現します。

代表的なパフォーマンスはバッドツアー(1987年)やデンジャラスツアー(1992年)のHuman Natureと、ヒストリーツアー(1996年)のStranger In Moscowで、パントマイムの壁を作った後にピタッと止まったり、ロボットの要素を使って身体の向きを少し変えた直後にピタッと止まる事で表現しています。

マイケル・ジャクソンのダイム・ストップは、止まる直前までポッピングと同等の鋭いスピードを維持し、止まる時に一気にスピードだけをカットしてぶれを抑える事によって、シャープさを重視したストッピングを表現しているのが特徴です。

ティッキング

ティッキングとは、時計の秒針がカチカチ動いていくように等間隔に順を追ってパラパラ漫画のような動きをする表現の事です。

マイケル・ジャクソンの場合は主に前方に歩く動作と組み合わせて全身ティッキングを行う事で表現しています。

代表的なパフォーマンスは、MTV Music Awards(1995年)のBillie Jeanのブレイクダウンにおいてムーンウォークを行う直前に披露したティッキンウォークです。

マイケル・ジャクソンのティッキンウォークはオーソドックスな表現の中に、頭、腕、体幹、及び脚の各パーツの動きが極力ぶれないようカチッ、カチッときっちり止めて行う、ごまかしの利かない難易度の高い表現を行っています。

特筆すべき点として、マイケル・ジャクソンが表現するティッキンウォークは、モーションとモーションの間隔をストロボスタイルのように若干大きめに表現している点です。

これは、遠くにいるオーディエンスが見ても一つ一つのキレのエッジが際立って見える事を考慮して採用した表現であると私は解釈しています。

参考

ティッキンウォークからバックスライドへと展開するバックスライド・コンビネーションです。

ティッキンウォークはオーソドックスにモーションとモーションの間隔を細かく刻んだ表現としています。

コブラ

コブラとはスネーキングの表現の一つで、胸を大きくアイソレーションして身体全体をロールしながら回転する表現の事です。

コブラの表現には主にポッピン・タコが表現する360度全方向回転型とブガルー・シュリンプが表現する90度分割方式の360度回転型があります。

マイケル・ジャクソンの場合、ポッピン・タコの360度全方向回転型をベースとしながらも原則回転せずにその場で胸のアイソレーションを行う事でコブラを行います。

代表的なパフォーマンスはScreamのショートフィルム(1995年)で、マイケル・ジャクソンは胸のアイソレーションを途中で止めて分割しながらコブラを表現しています。

また、マイケル・ジャクソンは1996年のヒストリーツアーのBillie JeanやStranger In Moscowでもコブラを行う事がありますが、その身体の使い方はポッピン・タコの影響を大きく受けており、特にBillie Jeanのブレイクダウンではコブラを行うモーションの途中で細かいアニメーションのアクセントを入れながら表現しています。

参考

その場で胸のアイソレーションを行うコブラを取り入れて表現しているコブラ・コンビネーションです。

この動画でも胸のアイソレーションを途中で止めて分割するコブラの表現を行っていますが、マイケル・ジャクソンの場合はさらに強調した分割の表現を採用しています。

スネーク

スネークとはコブラと同様にスネーキングの表現の一つで、身体のラインをS字状の体勢に形作る事で表現します。

特筆すべき点として、マイケル・ジャクソンのアニメーションダンスのほとんどがポッピン・タコの影響を受けている中、スネークはブガルー・シュリンプの影響を受けている点が挙げられます。

代表的なパフォーマンスは、1995年のScreamのショートフィルムや2001年の30th Anniversary CelebrationのBillie Jeanです。

Screamのショートフィルムでは、身体のラインをS字状の体勢に形作りながら、S字を描く軌道上で単発的に止めるアクセントを入れて表現しています。

また、30th Anniversary CelebrationのBillie Jeanでは、立った姿勢から低い姿勢に向かってS字を描いていく表現を行っています。

参考

マイケル・ジャクソンが採用しているブガルー・シュリンプ型のスネークです。

この動画ではブガルー・シュリンプの代表的な技である「S字上昇型スネーク」を表現しています。

アニメーションスタイル

アニメーションスタイル(ストップモーション・アニメーションスタイル)は、レイ・ハリーハウゼンの創り出したクリーチャーの要素とストップモーション・アニメーションの動きの要素を融合して表現したダンススタイルの事です。

その表現は、ストップモーション・アニメーション映画のクリーチャーの動きに見られる、コマ送り再生を早くしたような、滑らかさの中に細かくカクカクした独特の動きを織り交ぜて表現します。

代表的なパフォーマンスはデンジャラスツアー(1992年)やヒストリーツアー(1996年)のBillie Jeanと、デンジャラスツアーのJamやHuman Natureです。

デンジャラスツアーのライブ・イン・ブカレストでは、Billie Jeanのブレイクダウン終盤でマイクを取った後に、バイブレーションの小刻み且つランダムな動きの要素とポッピングの要素を織り交ぜる事によって細かい動きのパフォーマンスを行っています。

また、デンジャラスツアーのJamやHuman Natureでは、前方に歩く際に足を震わせたりひっかけたりするアクセントを入れて表現しています。

参考

ストップモーション・アニメーションスタイルをメインに表現したアニメーションダンスです。

次にやるべき事

マイケル・ジャクソンがよく使うアニメーションダンスの表現を理解した次にやるべき事は、ポップダンス(ポッピング)について理解する事です。

アニメーションの表現において、表現の全ての核となるポッピングは最重要の位置づけとなります。

なぜなら、ポッピングはアニメーションダンスやアニメーションスタイルの表現の全ての核であり、ポッピング単体の表現だけでなく、ロボットの表現にもウェーブの表現にもアニメーションの表現にも、そしてその他の各種スタイルの表現にもポッピングの要素が大きく関わっているからです。

そこで次回は、前半ではポップダンス(ポッピング)をやるなら絶対おさえておきたい「歴史」および「ジャンルとスタイルの違い」を、そして後半ではポッピングを習得する上で絶対おさえておきたい「音の取り方」「身体の使い方の基本と練習方法の考え方」をそれぞれ解説していきます。

【第8回】アニメーションダンスとポッピング

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アニメーションダンス動画

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アニメーションダンス解説

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それでは、またの機会にお会いしましょう。

KAIZOU NINGEN

ダンス研究家。専門はムーンウォークとアニメーションダンス。幼少期にマイケル・ジャクソンのメカニカルな動きを取り入れたダンスに影響を受け、1990年よりダンスの研究を始める。マイケル・ジャクソン没後10年特集番組へ情報提供(TBS「一番だけが知っている」:2019年)。

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