アニメーションダンスとロボットダンスの動きの違い|やり方・コツ

アニメーションダンスを習得するポイントを全12回にわたって解説していくシリーズの第10回目です。

アニメーションダンスとロボットダンスの動きの違い|やり方・コツ

前回の解説

前回(第9回)の解説では、”アニメーションダンスとウェーブ”にスポットを当てて解説しました。

【第9回】アニメーションダンスとウェーブ

ウェーブダンスのやり方|基礎から応用のアニメーションダンスまで
ウェーブの基本からアニメーションダンスとアニメーションスタイルのウェーブの違いについて解説します。

第10回目となる今回は、アニメーションダンスとロボットについて解説します。

ロボットの動きがロボットスタイルに至るまで

アニメーションダンス(※1)やアニメーションスタイル(※2)の表現の基本を構成する4種類のスタイル(※3)の一つであるロボットは、ロボットスタイル単体の表現、あるいはアニメーションスタイルのパートを表現するための要素として使われる機会が多く、アニメーションを演じる上で切っても切り離せない重要なスタイルです。

今では一般的に浸透しているロボットの動きですが、そのルーツを紐解くと1910年代後期にさかのぼります。

※1:今日のアニメーションダンスおよびその前身のオールドスクールアニメーションダンス

※2:オールドスクールアニメーションスタイル

※3:「ポッピング」、「ウェーブ」、「ロボット」、「アニメーション」

ロボットの動きの始まり

1917年公開のアメリカのサイレント映画「A Clever Dummy」では、機械を仕込まれたマネキン人形に扮した役者が人間によってプラグを接続されて電源が入るとロボットの動きのように稼働するというシーンを確認する事が出来ますが、当時は”ロボット”という言葉がまだ存在していない時代だったため、このような動きは“マネキンダンス”と呼ばれていました。

“ロボット”という言葉の誕生

“ロボット”という言葉が創られたのは、1920年にチェコの劇作家カレル・チャペックが「Russum’s universal robots」の題名に”Robot”という言葉を使用した事が始まりです。

この演劇は1921年にプラハで初演後、翌1922年にニューヨークで公演され、そこから世界に”ロボット”という言葉が普及していく事となります。

その後ロボットの動きはパントマイムの世界で開発され、1960年代後期にストリートダンスのロボットスタイルへと取り入れられます。

ロボットダンスの浸透

ストリートダンスにおけるロボットダンスは、全米で当時の最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」で1970年代初頭にロボットを踊るストリートダンサーが登場し始めた事がきっかけとなり徐々に浸透していきましたが、一般に広がった決定的出来事は、1973年の同番組においてジャクソン5のヴォーカルだったマイケル・ジャクソンが新曲「Dancing Machine」のライヴパフォーマンスでロボットを披露した事でした。

この出来事により全米の若い世代がロボットをやり始めるようになり、ロボットダンスが全盛期を迎える事となります。

ロボットの表現とは

ロボットの動きを取り入れた主な表現には「ロボット」「ロボット的な動き」、そして「ロボットをアクセントとして取り入れた動き」の3種類の表現があり、アニメーションダンス(今日のアニメーションダンス、オールドスクールアニメーションダンス)やアニメーションスタイル(オールドスクールアニメーションスタイル)ではこれらを使い分けて表現する事が求められます。

ロボットの主な表現とは、各部位の可動範囲を主に左右(X軸)・上下(Y軸)・前後(Z軸)・(各軸の)回転へ制限し、1モーションにつき1部位の機械的動作を基本原則とする表現です。

今日のロボットの表現は、身体の部位の移動や動作の始動・停止の際にポッピングの”身体を弾く”要素を入れた表現が主流となっていますが、何も入れない場合のノーマルなロボットの表現は、パントマイムのロバート・シールズ(Robert Shields)が行うマネキンダンスのようなロボットで、原則、身体の部位の移動や動作の始動・停止の際に発する機械特有の”ぶれ”を無くした、言わば”身体の部位の動作をスッと始めてピタッと止める”という、非常にスムーズな動きの表現です。

参考

身体の部位の移動や動作の始動・停止の際にポッピングの”身体を弾く”要素を入れた「今日のロボットの表現」と、身体の部位の移動や動作の始動・停止の際に発する機械特有の”ぶれ”を無くした「ノーマルなロボットの表現」を組み合わせて表現しています。

人間が”旧型ロボット”を演じ続けているワケ

ところで、現代のロボットは技術の進歩により私達が行うロボットダンスよりもはるかに滑らかで躍動的な動きをしています。

それでも私達は、今日のアニメーションダンスでもオールドスクールでもこの”旧型ロボット”を未だに「ロボットの表現の原則」として演じ続けています。

それはなぜなのでしょうか。

“ロボットダンスはこの旧型スタイルこそがオールドスクールのロボットダンスから続く「伝統的ロボットダンス」のスタイルだから”では、回答としては弱いように思います。

私の解釈では、”旧型ロボット”の表現は、人間らしさを極力排除した無機質さ、すなわち人間がイメージする”ロボットらしさ”を表現するのに最も効果的だから、です。

そのため、ロボットの表現には”非人間的無機質さ”の演出が必須となります。

そして、このロボットの持つ”非人間的無機質さ”を表現する事の一つとして、ロボットを演じている時は”瞬き”を排除する事が鉄則となっています。

ロボット的な動きの表現とは

ロボット的な動きの表現には主に3つの表現があります。

一つは「滑らかなロボットの動き」の表現、もう一つは、「流れるように動くロボット」の表現、そして「アニマトロニクス」の表現です。

1.”滑らかなロボットの動き”の表現

滑らかなロボットの動きの表現は、ブガルー・シュリンプの表現するロボットの表現でもある動きです。

左右(X軸)・上下(Y軸)・前後(Z軸)・(各軸の)回転へ各部位の可動範囲が固定された、1モーションにつき1部位の機械的動作を基本原則とする表現が、いわゆる”ロボットダンスの動き”ですが、この固定された各部位の可動範囲を解放し、”ウェーブの要素”を組み合わせる事によって、”より滑らかに動くロボットの動き”の表現となります。

これらの動きを表現する上でのポイントは、“カートゥーン・アニメーションの動きの要素”を入れないで表現する事です。

“カートゥーン・アニメーションの動きの要素”を入れると「リキッドアニメーション」となるため区別して表現します。

身体の使い方のポイントは、ロボットの表現の時と同様、1モーションにつき1部位の機械的動作を基本原則とし、身体の部位の移動や動作の始動・停止などの挙動はロボットのテイストを残しながら行う事です。

2.”流れるように動くロボット”の表現

流れるように動くロボットの表現は、今日のアニメーションダンスでも主要な表現の一つとなっていますが、もともとはブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)が創った”リキッドアニメーションスタイル”を原型としています。

リキッドアニメーションスタイルを構成する要素を分解すると、ロボットの動きとカートゥーン・アニメーションの動きに大別されます。

ロボットダンスの特徴である制限された各部位の可動範囲を解放し、この可動範囲を解放したロボットの表現へカートゥーン・アニメーションの特徴であるパラパラ漫画を細かく滑らかに映し出した動きの要素を組み合わせると、”流れるように動くロボット”となり、すなわちこれが”リキッドアニメーション”の表現となります。

身体の使い方のポイントは、カートゥーン・アニメーションの特徴である細かく滑らかに映し出したような表現をイメージし、滑らかなロボットの動きの中へ溶け込むように「ティッキングの要素」を小刻み且つランダムに細かいアクセントをつけながら入れて表現する事です。

そうする事によって、ティッキングのみの動きの表現とは異なる、流すところは流し、カチ・カチッ…と一つ一つの動きのぶれを抑えるところは抑えた、滑らかさのある”リキッドアニメーション”の表現となります。

参考

ここまでに解説してきた1の”滑らかなロボットの動き”の表現と、2の”流れるように動くロボット”(リキッドアニメーション)をメインに表現しています。

3.”アニマトロ二クス”の表現

アニマトロニクス(Animatronics)とは、内部にロボットが組み込まれたメカニカルな骨格へ、シリコンなどの伸縮可能な素材でリアルな筋肉と外皮へ造形された等身大の人形が、機械制御によってまるで生きているかのような動きを表現する事の出来る特撮技術(VFX:ビジュアル・エフェクツ)の事です。

その動きは人間の手によるリモートコントロールによって、キャラクターのイメージに限りなく近づけた滑らかな動きを演出する事で表現していますが、複合的に構成された機械を制御する事によって駆動しているため、スムーズなモーションの間で時折”ひっかかりのあるぶれ”を生じる事があります。

このスムーズなモーションの間で生じる”ひっかかりのあるぶれ”を含めたメカニカルな動きの表現をアニメーションの表現に取り入れて表現する事によって”アニマトロ二クス”の表現となります。

ポッピン・タコのアニマトロ二クス

“アニマトロ二クス”の表現はポッピン・タコ(Pop’N Taco)が開発した表現で、その表現のインスピレーションは、主にアニマトロニクスの特撮技術を使用したSF映画から得ています。

例えば、ポッピン・タコがインスピレーションを得ているものの一つに映画「ジュラシック・パーク」(1993年)のTレックスが挙げられます。

その表現はストップモーション・アニメーションスタイルのTレックスの動きの中にアニマトロニクスのメカニカルな動きの要素を織り交ぜる事によって表現しています。

参考

アニマトロニクスを取り入れたアニメーションを表現しています。

動画の中盤から終盤にかけて身体がぶれて見えるところが出て来ますが、これは動画の乱れではなく意図的にアニマトロニクスの視覚効果を入れて表現しているためにそのように見えています。

ロボットをアクセントとして取り入れた動きとは

ロボットをアクセントとして取り入れた動きの表現は、主にオールドスクール(オールドスクールアニメーションダンス、オールドスクールアニメーションスタイル)でよく使われている表現です。

ポッピン・タコが使う3つの表現

事例としてポッピン・タコが使う表現を3つ挙げます。

事例1

一つ目の事例は、動作の始まりの電気信号によって、機械を制御しているバネが急に稼働した時に生じる”ぶれ”の表現です。

これは1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)の2回目のバトルシーンでも行われています。

ポッピン・タコが自身の着ているジャケットを肩まで外し、その流れで足へ向けてボディーウェーブを行い、折り返しのボディーウェーブでジャケットを羽織ってタッチウェーブの構えを取った後、腕を上下方向にぶらすシーンがあります。

この”腕を上下にぶらす動き”が、”ロボットをアクセントとして取り入れた動き”の表現です。

事例2

もう一つの事例は、動作の終わりの電気信号によって、機械を制御しているバネが急に停止した時に生じる”ぶれ”の表現です。

これは事例1のタッチウェーブの話の続きとなりますが、ポッピン・タコがタッチウェーブを終えて身体の向きを変えた後、次のモーションに入る前に身体をぶらす動きを入れています。

つまり、タッチウェーブのモーションの前後においてポッピン・タコは”ロボットをアクセントとして取り入れた動き”の表現をセットで入れているという事です。

尚、このウェーブの動作の直前に”腕を上下にぶらす動き”の表現を入れ、ウェーブが終わった直後に”身体をぶらす動き”の表現を入れる手法は、ブガルー・シュリンプもよく使う表現の一つです。

事例3

3つ目の事例は、動作の停止の電気信号によって、機械を急停止した時の表現です。

この表現の興味深いところは、動作の始まりの時にぶれが生じるタイプのロボットが電気信号によって機械を急停止した場合、通常は機械を制御しているバネが急に抑制される事に伴ってロボット本体にぶれが生じる表現となりますが、ポッピン・タコの場合はぶれが生じない”ピタッと静止する表現”も使い分けて使用しているところです。

この表現でポッピン・タコは、ロボットの動きへエレクトリックブガルースタイルポッピン(ブーグスタイル)のスタイルの一つであるダイム・ストップを組み合わせ、止まる直前までポッピングと同等の鋭いスピードを維持し、止まる時に一気にスピードだけをカットしてピタッと止める事で重さを残したストッピングを行っています。

次にやるべき事

アニメーションダンスにおけるロボットとロボット的な動きについて理解した次にやるべき事は、アニメーションダンスの「ダンスの構成」について理解する事です。

「ダンスの構成」とは、ダンスを表現するための設計図のようなものです。

漫画でいう”ネーム”、アニメでいう”絵コンテ”と同様、この「ダンスの構成」の良し悪しによってオーディエンスを惹きつけられる表現となるかならないかが決まります。

そこで次回は、オーディエンスを惹きつけるアニメーションダンスの構成方法について解説します。

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それでは、またの機会にお会いしましょう。

KAIZOU NINGEN

ダンス研究家。専門はムーンウォークとアニメーションダンス。幼少期にマイケル・ジャクソンのメカニカルな動きを取り入れたダンスに影響を受け、1990年よりダンスの研究を始める。マイケル・ジャクソン没後10年特集番組へ情報提供(TBS「一番だけが知っている」:2019年)。

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