ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンのつま先の使い方

ムーンウォーク(バックスライド)のしくみから表現のポイントまでを全10回にわたり解説していくシリーズの第2回目です。
ムーンウォーク講座|10のステップで上達するバックスライドのやり方
ムーンウォークのしくみから表現のポイントまでを全10回シリーズで解説します。
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ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンのつま先の使い方

「ムーンウォーク」といえばほとんどの人はマイケル・ジャクソンがバックスライドしているムーンウォークを連想します。

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)はいまでも私たちに影響を与え続けており、実際マイケルのムーンウォークがいまでもバックスライドの技術のクオリティーの「基準」となっています。

そのマイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を演じている時、ほとんどの人はマイケルの「足元」、すなわち、マイケルがかかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「足の移動の動き」を見ています。

「足の移動の動き」はマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の中核をなす表現ですので、私たちの視線がマイケルの「足の移動の動き」へと誘導されていくのはごく当然のことです。

しかし、「マイケル・ジャクソンから表現を学ぶ」という視点でムーンウォーク(バックスライド)を見るのであれば、1歩先の視点として、特に注視することをおすすめしたい「ある部分」があります。

それは「つま先の使い方」です。

なぜならマイケル・ジャクソンが表現するムーンウォーク(バックスライド)は「つま先の使い方」に特徴があるからです。

そこで今回は「つま先の使い方」にスポットを当て、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を表現する際の「つま先の使い方」について詳しく解説していきたいと思います。

マイケルのつま先の使い方

マイケル・ジャクソンが表現するムーンウォーク(バックスライド)の「つま先の使い方」は、「つま先を立てた方の足」の「つま先の指の使い方」に特徴があります。

その「つま先の指の使い方」とは、つま先の指を立てた状態からバックスライドしているという特徴です。

つま先を立ててバックスライドする理由

バックスライドはマイケル・ジャクソンのようにつま先の指を立てた状態からバックスライドしなくても、つま先の指を曲げた状態からバックスライドすることもできます。

「つま先の指を曲げたバックスライドの表現」は、「つま先の指を立てたバックスライドの表現」よりも技術的には難易度が低いです。

なぜなら、前者はつま先の指を曲げることによって体重をつま先の指から付け根にかけての「面」で支えることができるのに対し、後者はつま先の指を立てることによって体重をつま先の指の先端の「点」で支えなければならないからです。

しかしながら、表現としての完成度を重要視するマイケル・ジャクソンが、単に技術的難易度という観点だけで難しい方の「つま先の指を立てたバックスライドの表現」を採用したとは考えにくい、というのが本解説の見解です。

それではなぜマイケル・ジャクソンは「つま先の指を立てたバックスライドの表現」を採用しているのでしょうか。

それは次の2つの背景があるからです。

1. マイケルが影響を受けた2人のレジェンドの影響

2. マイケルが確立した「ムーンウォーク」の表現コンセプト

1. マイケルが影響を受けた2人のレジェンドの影響

1つ目は、マイケル・ジャクソンが影響を受けた2人のレジェンドの影響です。

マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を自分の表現として確立していく過程において影響を受けた2人のレジェンドがいます。

その2人のレジェンドとは、ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)とブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)です。

ジェフリー・ダニエルは1980年にマイケル・ジャクソンへバックスライドを教えたことをきっかけに、のちに1987年公開のショートフィルム「Bad」や1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalのコレオグラファー兼ダンサーとしてマイケルの仕事にたずさわり、Badでは地下鉄構内でのシーン、Smooth Criminalでは、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演しています。

ブガルー・シュリンプは1983年(※1)から1991年までマイケル・ジャクソンのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわっています。

この2人が表現するバックスライドの「つま先の指の使い方」に共通しているのが、「つま先の指を立てたバックスライドの表現」です(※2)。

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の表現は特定の誰かから教わったものではなく、マイケル自身のクリエイティビティ(創造性)によって確立したものです。

しかし、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)を見てもわかるように、マイケルと接点のあったジェフリー・ダニエル、ブガルー・シュリンプのバックスライドの技術的影響を受けていることから、つま先の使い方に関しても彼らの「つま先の指を立てたバックスライドの表現」の影響を受けて採用したと考えてよいでしょう。

※1:1983年にモータウン25(※3)でマイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を初披露したあとの1983年。

※2:参考例として、ジェフリー・ダニエルが1982年に全英の音楽番組「Top of the Pops」へ出演した際にA night to rememberで披露したバックスライド(※参照:YouTube)、ブガルー・シュリンプが1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)で披露したバックスライド(※参照:YouTube)。

※3:マイケル・ジャクソンがジャクソン5時代に所属していたレコードレーベル「モータウン」の設立25周年を記念して開催された音楽の祭典。そのハイライトは1983年5月16日に全米でTV放送された。祭典の正式名称は「Motown25: Yesterday, Today, Forever」(モータウン25:昨日、今日、そして永遠に)。

2. マイケルが確立した「ムーンウォーク」の表現コンセプト

2つ目は、マイケル・ジャクソンが確立した「ムーンウォーク」の表現コンセプトです。

1988年に出版された自伝「ムーンウォーク」(※4)でマイケル・ジャクソンは、1983年のムーンウォーク(バックスライド)初披露のために事前に考えていたこととして、Billie Jeanの間奏部分で月の上を歩いているかのように後ろと前へ同時に歩いてみることだったと語っています。

このことからマイケル・ジャクソンは、当時ストリートダンサーの間で流行りつつあった、かかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」を、マイケル自身のクリエイティビティ(創造性)によって、月の上を歩いているかのように後ろと前へ同時に歩いていく「ムーンウォーク」である、と「解釈」しました。

つまりマイケル・ジャクソンは、「前に進んでいるようで後ろへ進んでいくバックスライド」を自身の掲げる「ムーンウォーク」の表現コンセプトとしています。

このことから、この「ムーンウォーク」の表現コンセプトにもっとも理想的な「つま先の使い方」の表現をマイケル・ジャクソンが試行錯誤し、最終的に行き着いた結果が「つま先の指を立てたバックスライドの表現」だった、すなわちマイケルが掲げる「ムーンウォーク」の表現コンセプトを実現するためには、つま先の指を曲げたバックスライドではなく、「つま先の指を立てたバックスライドの表現」でなければならなかった、と考えてよいでしょう。

※4:マイケル・ジャクソン著、田中康夫訳、河出書房新社、2009年。

大きな違い

特筆すべき点として、「つま先の指まで意識が行き届いていないことによってつま先が明らかに曲がっている」のと、「つま先の指を立てていてもつま先が曲がっているように見える」のには大きな違いがあるという点があげられます。

たとえばマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の映像にもつま先が曲がっているように見えるシーンがあります。

この事象は、つま先の指を立てて体重を乗せることによって靴の先端が潰れてしまうためにつま先が曲がっているように見えるのがおもな原因であり、靴の中ではつま先の指の先端までしっかりと立ててムーンウォーク(バックスライド)をおこなっていると考えてよいでしょう。

参考:私の場合

参考までに私の場合、経験上、先端が柔らかくなるまで使いこなした靴、ソール部分が薄いスニーカー、先端がつま先の指よりも突き出ているデザインの靴やスニーカーで、つま先の指を立てていてもつま先が曲がっているように見えることがあります。

たとえば次の私のバックスライドの動画でもつま先が曲がっているように見える箇所がありますが、これもつま先の指を立てて体重を乗せることによって靴の先端が潰れてしまうためにつま先が曲がっているように見えるのがおもな原因であり、実際スニーカーの中ではつま先の指の先端までしっかりと立ててバックスライドをおこなっています。

つま先の使い方とその重要性

以上が「つま先の使い方」についての解説でした。

わずか数センチ程度の「つま先の使い方」ではありますが、クオリティーの高いバックスライドを表現するためには、つま先の指まで意識を行き届かせ、つま先の指を立ててバックスライドすることが重要です。

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次回について

つま先の使い方について理解した次におさえておきたいことは、「バックスライドに耐えうるつま先を作ること」です。

第1回目の「ムーンウォークのやり方|バックスライド1歩目の簡単な方法とコツ」で解説した内容を実際にやってみると、思った以上に「つま先を立てた方の足」のつま先の指に負荷がかかることを実感したと思います。

バックスライドを使いこなせるようになるためには「つま先の強化」が必須です。

第3回|つま先の作り方

そこで次回は「つま先の強化」にスポットを当て、「バックスライドに耐えうるつま先の作り方とその練習方法」について詳しく解説していきたいと思います。

ムーンウォークのやり方|バックスライドに耐えうるつま先の練習方法
バックスライドがキレよくキマるかキマらないかの境界線はつま先の指にあると言っても過言ではありません。

それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。

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