ムーンウォークのやり方|床からの反発力を利用したバックスライド
第1回目の「ムーンウォークのやり方|バックスライド1歩目の簡単な方法とコツ」で解説した内容を実際にやってみると、思った以上につま先を立てた方の足のつま先の指に負荷がかかることを実感したと思いますが、それと同様に「足を後方へスライドすることができない」ということに気づいたと思います。
このおもな原因は「足を後ろへ引こうと意識すること」にあります。
なぜならバックスライドのしくみの本質を理解すると、意識的に足を後ろへ引こうとしなくても自然に後方へスライドできるようになっているからです。
それではどうすれば足を自然に後方へスライドできるようになるのでしょうか。
それを解決するキーワードが「床からの反発力」です。
そこで今回は「床からの反発力」にスポットを当て、「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみについて詳しく解説していきたいと思います。
バックスライドのしくみの本質
本題に入る前に「バックスライドのしくみの本質」について解説します。
最低限おさえておきたいこと
「バックスライドのしくみの本質」として最低限おさえておきたいことは次の2つです。
1. 後方へスライドする足は「つま先を立てていない方の足」
2. バックスライドの原動力となる足は「つま先を立てた方の足」
1. 後方へスライドする足は「つま先を立てていない方の足」
1つ目は、後方へスライドする足は「つま先を立てていない方の足」、ということです。
バックスライドは「つま先を立てた方の足」と「つま先を立てていない方の足」を使って後方へ交互にスライドしながら移動していくことで表現します。
バックスライド1歩目の場合、後方へスライドする足が「つま先を立てた方の足」(左足)と「つま先を立てていない方の足」(右足)のどちらになるのかというと、後者の「つま先を立てていない方の足」(右足)です。
なぜなら「つま先を立てた方の足」(左足)には体重の半分以上の負荷がかかっているため、この足をつま先が立ったままの状態で後方へスライドしようとすると、当然の成り行きとしてバックスライドの途中で後ろにバランスを崩してしまうからです。
2. バックスライドの原動力となる足は「つま先を立てた方の足」
2つ目は、バックスライドの原動力となる足は「つま先を立てた方の足」、ということです。
バックスライドは後方へスライドする「つま先を立てていない方の足」に動きがあるためバックスライドの原動力となる足のように思えてしまいます。
しかし実際は、足を動かさない「つま先を立てた方の足」がバックスライドの原動力となる足です。
なぜなら足を動かさない「つま先を立てた方の足」が原動力となって「後方へ押し出される力」を生み出し、その力によって「つま先を立てていない方の足」が後方へスライドできるからです。
この「つま先を立てた方の足」が生み出すバックスライドの原動力が「床からの反発力」であり、この「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみを理解することによって意識的に足を後ろへ引こうとしなくても自然に後方へスライドできるようになります。
「床からの反発力」を利用した練習方法
以上を踏まえ、ここからは「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみとその練習方法について解説します。
バックスライドを構成する「2つの力」
バックスライドの動きはおもに次の「2つの力」によって構成されています。
1. 床からの反発力 (原動力)
「つま先を立てた方の足」が生み出す「床からの反発力」(原動力)。
2. 後方へ押し出される力
「床からの反発力」によって生み出される「後方へ押し出される力」。
この「床からの反発力」と「後方へ押し出される力」の「2つの力」の感覚をつかむ練習を通して「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみを理解することができるため、その結果、意識的に足を後ろへ引こうとしなくても自然に後方へスライドできるようになります。
「床からの反発力」の感覚をつかむ方法
ここからは「床からの反発力」の感覚をつかむ方法について解説します。
「床からの反発力」はバックスライドの原動力であり、「つま先を立てた方の足」から生み出されます。
「床からの反発力」の感覚をつかむ方法は次の3ステップです。
ステップ1:「ムーンウォークの構え」の姿勢に入る
ステップ2:「つま先のゼロポジション」を作る
ステップ3:「つま先を立てた方の足」へ体重を乗せる
ステップ1:「ムーンウォークの構え」の姿勢に入る
まずは両足のつま先をそろえてまっすぐに立ちます。
次に左足のつま先を立てて「ムーンウォークの構え」(※1)の姿勢に入ります(図の右)。
※1:バックスライドに入る直前につま先を立て、その「つま先を立てた方の足」のつま先へ体重の半分以上を乗せる動作のこと。ここではつま先へ体重を乗せずにつま先をスッと素早く立ち上げる動作までをおこなう。
ステップ2:「つま先のゼロポジション」を作る
この「ムーンウォークの構え」の姿勢から「つま先のゼロポジション」(※2)を作ります。
「つま先のゼロポジション」は指の先端が床に接した状態とし、つま先から足の甲にかけて「ほどよい弓なりの形」となることが理想的です。
※2:詳しくは第3回目の「ムーンウォークのやり方|バックスライドに耐えうるつま先の練習方法」を参照。
ステップ3:「つま先を立てた方の足」へ体重を乗せる
ここから「つま先を立てた方の足」(左足)へ体重の半分以上を乗せていきます。
つま先へ体重を乗せるポイント
つま先へ体重を乗せていく際のポイントは、つま先の指の先端を床へ向けて突き刺すように「押す」ことです。
この体重の乗せ方に慣れてくると、やがて床からつま先を押し返してくる力、すなわち「床からの反発力」の感覚をつかめるようになります。
「後方へ押し出される力」の感覚をつかむ方法
ここからは「後方へ押し出される力」の感覚をつかむ方法について解説します。
「後方へ押し出される力」は「床からの反発力」によって生み出される力です。
この力によって「つま先を立てていない方の足」を後方へスライドすることができます。
「後方へ押し出される力」の感覚をつかむ方法は次の3ステップです。
※慣れるまでは補助として壁を使い、正面の壁に両手を軽く添えておこなった方がよいでしょう。
ステップ1:つま先を立てる
ステップ2:「つま先を立てた方の足」へ体重を乗せる
ステップ3:「つま先を立てていない方の足」が後方へ押し出される
ステップ1:つま先を立てる
ステップ1は前述の「床からの反発力」の感覚をつかむ方法のステップ1から2の手順と同じです。
左足のつま先をスッと素早く立ち上げて「ムーンウォークの構え」の姿勢に入り、「つま先のゼロポジション」を作ります。
ステップ2:「つま先を立てた方の足」へ体重を乗せる
「つま先を立てた方の足」(左足)へ体重の半分以上の負荷をかけていきます。
これにより「つま先を立てた方の足」(左足)へ体重が集中します。
一方、「つま先を立てていない方の足」(右足)は体重の負荷が軽くなるため、「後方へスライドしやすい状態」となります。
ステップ3:後方へ押し出される
「つま先を立てた方の足」(左足)のつま先と床との接点の位置を固定し、つま先の指の先端を床へ向けて突き刺すように押しながら(1)かかとを床へ着地していきます(3)。
この時床からつま先を押し返してくる力、すなわち「床からの反発力」が生み出され(2)、この「床からの反発力」によって「後方へ押し出される力」が生み出されます。
そして「つま先を立てた方の足」(左足)のかかとが床へ着地していく過程で(3)、「つま先を立てていない方の足」(右足)が後方へ押し出されます(4)。
足を後方へスライドする際に大切なこと
以上が「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみについての解説でした。
バックスライドで足を後方へスライドする時に大切なことは、意識的に足を後ろへ引くのではなく、「つま先を立てた方の足」の「床からの反発力」によって、「つま先を立てていない方の足」が自然に後方へ押し出されてスライドしていくという感覚をつかむことです。
これに慣れてくると、意識的に後ろへ引こうとしなくても「後方へ押し出される力」によって「つま先を立てていない方の足」(右足)が自然に後方へ押し出されてスライドしていく感覚をつかめるようになります。
次回について
これまでの解説を振り返ると、バックスライド1歩目の方法(第1回)からつま先の使い方(第2回)、つま先の作り方(第3回)、そして床からの反発力(第4回)というように、回を追うごとに「より実践的なバックスライドのしくみと足の使い方」について解説してきました。
これらの解説への理解を深めた次におさえておきたいことは、「バックスライド2歩目に取り組むこと」です。
バックスライド2歩目の基本的な動作のしくみは1歩目と同じですが、バックスライド2歩目は1歩目のバックスライドをおえた状態から動作がはじまるため、1歩目とは異なる姿勢からバックスライドがはじまります。
第5回|バックスライド2歩目
そこで次回は「バックスライド2歩目」にスポットを当て、そのしくみと足の使い方について詳しく解説していきたいと思います。
それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。
おすすめコンテンツ
あわせてチェックしたい「おすすめコンテンツ」です。
ムーンウォーク動画
各種ムーンウォークの動画をYouTubeで公開しています。
バックスライド
ムーンウォーク(バックスライド)のしくみから表現のポイントまでを全10回シリーズで解説しています。
サイドウォーク
サイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れた応用について解説しています。
その場ムーンウォーク
「その場ムーンウォーク」の基本と表現の応用について解説しています。
回転ムーンウォーク
回転ムーンウォークを習得する上でおさえておきたい主要6種類の表現について解説しています。
ムーンウォークの凄さ
マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の何が「すごい」のかについて解説しています。
マイケルを乗り越える
マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための考察と方法について全5回シリーズで解説しています。
アニメーションダンス
「5つの事例」をもとにマイケル・ジャクソンが影響を受けた「アニメーション」の表現について解説しています。