ムーンウォークのやり方|バックスライドに耐えうるつま先の練習方法
前回(第2回)の「ムーンウォークのやり方|マイケル・ジャクソンのつま先の使い方」では、クオリティーの高いバックスライドを表現するためには、つま先の指まで意識を行き届かせ、つま先の指を立ててバックスライドすることが重要と解説しました。
これを踏まえ、第1回目の「ムーンウォークのやり方|バックスライド1歩目の簡単な方法とコツ」で解説した内容を実際にやってみると、思った以上に「つま先を立てた方の足」のつま先の指に負荷がかかることを実感したと思います。
このことから、バックスライドを使いこなせるようになるためには「つま先の強化」が必須です。
そこで今回は「つま先の強化」にスポットを当て、「バックスライドに耐えうるつま先の作り方とその練習方法」について詳しく解説していきたいと思います。
バックスライドの「つま先の使い方」
まずはじめに、バックスライドの「つま先の使い方」についてタイプ別に解説します。
2つの「つま先の使い方」
バックスライドの「つま先の使い方」は、タイプ別に分類するとおもに次の2つのタイプがあります。
1. つま先の指を立てたバックスライド
2. つま先の指を曲げたバックスライド
この2つの表現の「つま先の使い方」を図で示すと次のとおりです。
1. つま先の指を立てたバックスライド
1つ目のタイプは「つま先の指を立てたバックスライド」です。
このタイプは「つま先を立てた方の足」のつま先の指を立てることによって、体重をつま先の指の先端の「点」で支えた状態からバックスライドします。
「つま先の指を立てたバックスライド」は、体重をつま先の指の先端の「点」で支えた状態からバックスライドするため、体重を支える面積がせまく、つま先の指の先端にかかる体重の負荷が大きくなることから、「つま先の指を曲げたバックスライドの表現」よりも難易度が高いという「デメリット」があります。
しかし難易度が高い反面、バックスライドの表現が本来持つ「滑らかさ」とつま先の指を立てることによる「つま先のエッジ」とのコントラストが強調されて、キレのよいバックスライドの表現となる「メリット」も持っています。
2. つま先の指を曲げたバックスライド
2つ目のタイプは「つま先の指を曲げたバックスライド」です。
このタイプは「つま先を立てた方の足」のつま先の指を曲げることによって、体重をつま先の指から付け根にかけての「面」で支えた状態からバックスライドします。
「つま先の指を曲げたバックスライド」は、体重をつま先の指から付け根にかけての「面」で支えた状態からバックスライドするため、体重を支える面積が広く、つま先の指の先端にかかる体重の負荷が軽減することから、「つま先の指を立てたバックスライド」よりも難易度が低いという「メリット」があります。
しかし難易度が低い反面、つま先の指が床に対して明らかに曲がっていることから、バックスライドの表現が本来持つ「滑らかさ」とつま先の指を曲げることによる「つま先のやわらかさ」との相乗作用によって、どうしてもマイルドなバックスライドの表現となってしまう「デメリット」も持っています。
マイケルの「つま先の使い方」
この2つの「つま先の使い方」のうち、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)で採用している表現は、1の「つま先の指を立てたバックスライド」です。
バックスライドに耐えうるつま先の練習方法
以上を踏まえ、ここからはバックスライドに耐えうるつま先の作り方とその練習方法について解説します。
初級編:感覚をつかむ
初級編はつま先を作る感覚をつかむところからはじめます。
「感覚をつかむこと」がおもな目的であるため、この練習は立たずに床に座っておこないます。
このつま先を作る感覚をつかむ手順は次の3ステップです。
ステップ1:両足を伸ばす
ステップ2:つま先を傾ける
ステップ3:つま先がこれ以上傾かないところまで傾ける
ステップ1:両足を伸ばす
床に腰を下ろして座り、両足を伸ばします。
ステップ2:つま先を傾ける
両足のつま先を前方に伸ばすように床方向へ徐々に傾けていきます。
ステップ3:つま先がこれ以上傾かないところまで傾ける
つま先を傾けていく際、つま先の各指、足の甲、足首というように「部位」を意識しながら順に傾けていき、やがてつま先がこれ以上傾かないところまで到達したらその状態を維持します。
「つま先のゼロポジション」とは
このシリーズの解説では、「つま先を立てた方の足」のつま先へ体重を乗せた時に的確に指まで伝わる最適なつま先の形のことを「つま先のゼロポジション」と呼びます(図の左)。
ステップ3でつま先を前方に伸ばし、つま先がこれ以上傾かないところまで到達した状態で維持すると解説しましたが、このつま先の形が「つま先のゼロポジション」です。
実践編:つま先を作る
実践編は実際につま先へ体重を乗せてつま先の指で体重を支えながらおこなうため、立位姿勢で練習します。
「つま先で床を押してもその反発力で崩れることのない剛性のあるつま先」を作ることを目標とします。
このつま先を作る手順は次の3ステップです。
ステップ1:「つま先のゼロポジション」を作る
ステップ2:指が巻き込む形となっていないか確認する
ステップ3:つま先へ体重を乗せる
ステップ1:「つま先のゼロポジション」を作る
まずは両足のつま先をそろえてまっすぐに立ちます。
次に左足のつま先を立てて「ムーンウォークの構え」(※1)の姿勢に入ります(図の右)。
「ムーンウォークの構え」のつま先を立てる動作はゆっくりではなく、つま先をスッと素早く立ち上げるイメージでおこないます。
そしてこの動作に入ると同時に「つま先のゼロポジション」を作ります。
※1:バックスライドに入る直前につま先を立て、その「つま先を立てた方の足」のつま先へ体重の半分以上を乗せる動作のこと。ここではつま先へ体重を乗せずにつま先をスッと素早く立ち上げる動作までをおこなう。
ステップ2:指が巻き込む形となっていないか確認する
「つま先のゼロポジション」を作ったら、つま先の指が床に対して巻き込んだ状態となっていないかを確認しましょう。
つま先の指が巻き込んだ状態となると、結果的に指が折りたたんだ状態となり、つま先へ体重を乗せた時に的確に指まで伝わらなくなってしまいますので、指の先端は床に接した状態とします。
立位姿勢での「つま先のゼロポジション」は、つま先の各指の間隔をぎゅっと固めるようにつま先全体の密度を高め、つま先から足の甲にかけて「ほどよい弓なりの形」となることが理想的です。
ステップ3:つま先へ体重を乗せる
この「つま先のゼロポジション」の形を作った状態からつま先へ体重を乗せていきます。
バックスライドに耐えうるつま先とするためには「つま先を立てた方の足」のつま先へ体重の半分以上を乗せることが必須となるため、これを目標に練習します。
つま先へ体重を乗せる練習は次の3段階に分けておこなうとよいでしょう。
第1段階:つま先と床との接点に体重を乗せる
第2段階:さらにつま先へ負荷をかける
第3段階:体重の半分以上を乗せる
第1段階:つま先と床との接点に体重を乗せる
はじめはつま先と床との接点に体重を乗せることを意識しながら慣らしていきます。
第2段階:さらにつま先へ負荷をかける
慣れてきたら体重を前へ移し、第1段階よりもさらにつま先へ負荷をかけていきます。
第3段階:体重の半分以上を乗せる
ここまで慣れてきたらつま先をスッと素早く立ち上げると同時に「つま先のゼロポジション」を作り、つま先へ体重の半分以上を乗せていきます。
左足の練習がおわり次第、足を切り替えて右足も同じ手順で練習します。
バックスライドをキレよくキメるために
以上が「バックスライドに耐えうるつま先の作り方とその練習方法」についての解説でした。
バックスライドがキレよくキマるかキマらないかの境界線はつま先の指にあると言っても過言ではありませんので、地味な練習ではありますが毎日少しずつ慣らしていきましょう。
次回について
バックスライドに耐えうるつま先の作り方とその練習方法について理解した次におさえておきたいことは、「床からの反発力を利用した足の使い方を理解すること」です。
第1回目の「ムーンウォークのやり方|バックスライド1歩目の簡単な方法とコツ」で解説した内容を実際にやってみると、思った以上につま先を立てた方の足のつま先の指に負荷がかかることを実感したと思いますが、それと同様につま先の指に負荷がかかる以前の問題として「足を後方へスライドすることができない」ということに気づいたと思います。
このおもな原因は「足を後ろへ引こうと意識すること」にあります。
なぜならバックスライドのしくみの本質を理解すると、意識的に足を後ろへ引こうとしなくても自然に後方へスライドできるようになっているからです。
それではどうすれば足を自然に後方へスライドできるようになるのでしょうか。
それを解決するキーワードが「床からの反発力」です。
第4回|床からの反発力
そこで次回は「床からの反発力」にスポットを当て、「床からの反発力」を利用したバックスライドのしくみについて詳しく解説していきたいと思います。
それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。
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