回転ムーンウォーク|マイケル・ジャクソンが採用した主要5種とは

マイケル・ジャクソンが採用した主要5種類の回転ムーンウォークについて解説していきます。
スポンサーリンク

回転ムーンウォーク|マイケル・ジャクソンが採用した主要5種とは

今回はマイケル・ジャクソンが採用した「回転ムーンウォーク」にスポットを当て、主要5種類の各種回転ムーンウォークについて解説していきます。

各リンク先の解説では、回転ムーンウォークのやり方について図解入りで詳しく解説していますので参考としていただければと思います。

回転ムーンウォークとは

回転ムーンウォークは、もともとは「ムーンウォーク」(The Moonwalk)という名称として、エレクトリックブガルーズ(Electric Boogaloos)(※1)のメンバーのティッキン・ウィル(Tickin’ Will)が1975年に考案し、リーダーのブガルー・サム(Boogaloo Sam)(※2)によって発展していったスタイルで、ひざをやわらかく使いながら円を描くように体重移動していく表現を利用して、月の上を歩いているかのようにゆっくりと歩いてみせることによって表現します。

かかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」をマイケル・ジャクソンが「ムーンウォーク」と命名し1983年のモータウン25(※3)で披露したことによって、一般にはバックスライドの表現が「ムーンウォーク」として広く知られるようになりましたが、歴史的観点からするとブガルー・サムの、ひざをやわらかく使いながら円を描くように体重移動していく表現を利用して、月の上を歩いているかのようにゆっくりと歩いてみせる表現が本来の「ムーンウォーク」(The Moonwalk)です。

この「ムーンウォーク」(The Moonwalk)の表現はマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)とは明らかに異なる表現コンセプトで創られたスタイルであるため、現在はそれとは区別して「オリジナルムーンウォーク」(Original Moonwalk)と呼ばれています。

※1:ブガルー・サムによって1977年に結成された伝説的ダンスクルー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」(Popping)と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」(Boogaloo)の2大ダンススタイルを世に送り出した。なお、結成時の1977年は、エレクトリックブガルーロッカーズ(Electric Boogaloo Lockers)の名称でカリフォルニア州フレズノを本拠地としていたが、1978年にカリフォルニア州ロングビーチへ移転後「エレクトリックブガルーズ」へと改名した。

※2:エレクトリックブガルーズのリーダー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」を創り出したオリジネーター(考案者)。マイケル・ジャクソンの作品にはショートフィルム「ゴースト」に出演した。

※3:マイケル・ジャクソンがジャクソン5時代に所属していたレコードレーベル「モータウン」の設立25周年を記念して開催された音楽の祭典。そのハイライトは1983年5月16日に全米でTV放送された。祭典の正式名称は「Motown25: Yesterday, Today, Forever」(モータウン25:昨日、今日、そして永遠に)。この祭典がマイケルにとってムーンウォーク(バックスライド)初披露の場となった。

2つの系統

マイケル・ジャクソンが表現する回転ムーンウォークにはおもに2つの系統があり、1つは、ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)(※4)の影響を受けた、円を描くように体重移動することによって表現する「オリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク」と、もう1つは、ブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)(※5)の影響を受けた、円を描くように足をスライドすることによって表現する「サークルフロート系回転ムーンウォーク」です。

マイケル・ジャクソンは1984年のジャクソンズヴィクトリーツアーから1987年のバッドツアー初期までサークルフロート系回転ムーンウォークを採用し、1988年のバッドツアー中期以降はオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークを採用しました。

※4:マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を自分の表現として確立していく過程において影響を受けた2人のレジェンドのうちの一人。1980年にマイケルへバックスライドを教えたことをきっかけに、のちに1987年公開のショートフィルム「Bad」や1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalのコレオグラファー兼ダンサーとしてマイケルの仕事にたずさわり、Badでは地下鉄構内のシーン、Smooth Criminalでは、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。

※5:マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を自分の表現として確立していく過程において影響を受けた2人のレジェンドのうちのもう一人のレジェンド。1983年から1991年までマイケルのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわった。

サークルフロート系

1984年、映画「ブレイクダンス」(Breakin’)のオープニングシーンでブガルー・シュリンプは、つま先からかかとにかけて円を描くように足をスライドしていく表現を利用して、床から浮いているかのように回転しながら自在に移動していくサークルフロート(回転ムーンウォーク)を披露します(※参照:YouTube)。

この円を描くように足をスライドすることによって表現するサークルフロートが、のちに1984年のジャクソンズヴィクトリーツアーから1987年のバッドツアー初期までマイケルが採用することとなるサークルフロート系回転ムーンウォークの原型となりました(※6)。

※6:ブガルー・シュリンプバージョンの、円を描くようにスライドして回転する「サークルフロート系回転ムーンウォーク」の解説は、「回転ムーンウォークのやり方|円を描くようにスライドして回転する」を参照。

3つのサークルフロート系

マイケル・ジャクソンが1984年のジャクソンズヴィクトリーツアーから1987年のバッドツアー初期まで採用したおもなサークルフロート系回転ムーンウォークは次の3つです。

1. ヴィクトリーツアー中期バージョン

円の中心に対して自転しながら公転する「自転公転型回転ムーンウォーク」。

2. ヴィクトリーツアー後期バージョン

2つの折り返し点をターンで回転する「2点間ターン型回転ムーンウォーク」。

3. バッドツアー初期バージョン

2つの折り返し点をスライドで回転する「2点間スライド型回転ムーンウォーク」。

1. ヴィクトリーツアー中期バージョン

1つ目は、ジャクソンズヴィクトリーツアー中期の公演都市トロント(カナダ)のBillie Jeanで披露した、月の上を歩いているかのように円の中心に対して自転しながら公転する「自転公転型回転ムーンウォーク」です。

この回転ムーンウォークは、「円の中心に対して反時計回りに自転しながら周回軌道を時計回りに公転するように一回りする表現」に特徴があります。

>>詳しい解説はこちら

回転ムーンウォークのやり方|円の中心に対して自転しながら公転する
「自転公転型回転ムーンウォーク」の足の使い方の基本について解説します。
2. ヴィクトリーツアー後期バージョン

2つ目は、ジャクソンズヴィクトリーツアー最後の公演都市ロサンゼルスのBillie Jeanで披露した、月の上を歩いているかのように2つの折り返し点をターンで回転する「2点間ターン型回転ムーンウォーク」です。

この回転ムーンウォークは、中期バージョンの「自転公転型回転ムーンウォーク」の足の使い方を引き継ぎながらも、中期バージョンのように円の中心に対して反時計回りに自転しながら周回軌道を時計回りに公転するのではなく、「左右2つの折り返し点をターンで回転しながら反時計回りに一回りする表現」に特徴があります。

>>詳しい解説はこちら

回転ムーンウォークのやり方|2つの折り返し点をターンで回転する
「2点間ターン型回転ムーンウォーク」の足の使い方の基本について解説します。
3. バッドツアー初期バージョン

3つ目は、バッドツアー初期の公演都市横浜のBillie Jeanで披露した、月の上を歩いているかのように2つの折り返し点をスライドで回転する「2点間スライド型回転ムーンウォーク」です。

この回転ムーンウォークは、ジャクソンズヴィクトリーツアー後期バージョンの「2点間ターン型回転ムーンウォーク」の足の使い方を引き継ぎながらも、後期バージョンのように左右2つの折り返し点をターンで回転しながら反時計回りに一回りするのではなく、「左右2つの折り返し点をスライドで回転しながら時計回りに一回りする表現」に特徴があります。

>>詳しい解説はこちら

回転ムーンウォークのやり方|2つの折り返し点をスライドで回転する
「2点間スライド型回転ムーンウォーク」の足の使い方の基本について解説します。

オリジナルムーンウォーク系

1979年、ジェフリー・ダニエルはキャスパー・キャ二デイト(Geron “Caszper” Canidate)(※7)とクーリー・ジャクソン(Derek “Cooley” Jaxson)(※8)と共に「Jeffrey Daniel & The Eclipse」として、当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」へ出演した際に、ブガルー・サムのオリジナルムーンウォークに影響を受けた、円を描くように体重移動することによって表現する回転ムーンウォークを披露します(※参照:YouTube)。

この円を描くように体重移動することによって表現する回転ムーンウォークが、のちに1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでマイケル・ジャクソンが採用することとなる回転ムーンウォークの原型となりました。

※7:当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」にエレクトリックブガルーズのダンススタイルの一つである「バックスライド」を早い時期に持ち込み披露したダンサーの一人。1979年にクーリー・ジャクソンと共にマイケル・ジャクソンへバックスライドを教えたことをきっかけに、1987年公開のショートフィルム「Bad」では地下鉄構内のシーン、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」ではSmooth Criminalの、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。

※8:当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」にエレクトリックブガルーズのダンススタイルの一つである「バックスライド」を早い時期に持ち込み披露したダンサーの一人。1979年にキャスパー・キャニデイトと共にマイケル・ジャクソンへバックスライドを教えたことをきっかけに、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでは、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。

2つのオリジナルムーンウォーク系

1988年のバッドツアー中期以降からマイケル・ジャクソンが採用したオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークは次の2つです。

1. Smooth Criminalバージョン

回転軸の右足を移動して回転する「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」。

2. デンジャラスツアー以降バージョン

回転軸の右足を移動しないで回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」。

1. Smooth Criminalバージョン

1つ目は、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalで披露した、回転軸の右足を移動して月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」です。

マイケル・ジャクソンのオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク(右足回転軸移動型回転ムーンウォーク)がはじめて登場したのは1988年3月におこなわれたグラミー賞のThe Way Make Me Feelのパフォーマンスで、その後バッドツアー中期以降のBillie Jeanへ取り入れられました。

そして1988年10月公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでこの回転ムーンウォークを披露してからは、2回目のワールドツアーの1992年のデンジャラスツアーと最後のワールドツアーの1996年のヒストリーツアーで同曲のダンスパートへ取り入れられました。

この回転ムーンウォークは、「回転軸の右足を移動してからつま先を支点として回転する表現」に特徴があります。

>>詳しい解説はこちら

回転ムーンウォークのやり方|回転軸の右足を移動して回転する|前編
「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」の足の使い方の基本について解説します。
2. デンジャラスツアー以降バージョン

2つ目は、1992年のデンジャラスツアー以降のBillie Jeanで披露した、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」です。

この回転ムーンウォークはバッドツアー中期のBillie Jeanでも登場したことがある回転ムーンウォークで、前述の「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」がBillie JeanからSmooth Criminalへ移行したことにともない1992年のデンジャラスツアーから本格導入し、1996年のヒストリーツアーでも採用しました。

またこの回転ムーンウォークは、Smooth Criminalバージョンの「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」の足の使い方を引き継ぎながらも、Smooth Criminalバージョンのように回転軸の右足を移動してからつま先を支点として回転するのではなく、「回転軸の右足を移動せずにその場でつま先を支点として回転する表現」に特徴があります。

>>詳しい解説はこちら

回転ムーンウォークのやり方|回転軸の右足を移動しないで回転する
「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」の足の使い方の基本について解説します。
スポンサーリンク

おすすめコンテンツ

あわせてチェックしたい「おすすめコンテンツ」です。

ムーンウォーク動画

各種ムーンウォークの動画をYouTubeで公開しています。

>>YouTubeチャンネルはこちら

回転ムーンウォーク

回転ムーンウォークを習得する上でおさえておきたい主要6種類の表現について解説しています。

回転ムーンウォークのやり方|おさえておきたい主要6種類の表現
回転ムーンウォークを習得する上でおさえておきたい主要6種類の基本を全7回シリーズで解説します。

バックスライド

ムーンウォーク(バックスライド)のしくみから表現のポイントまでを全10回シリーズで解説しています。

ムーンウォーク講座|10のステップで上達するバックスライドのやり方
ムーンウォークのしくみから表現のポイントまでを全10回シリーズで解説します。

サイドウォーク

サイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れた応用について解説しています。

サイドウォークのやり方|横へ移動するムーンウォークの表現
サイドウォークの基本とアニメーションダンスの要素を取り入れた応用について解説します。

その場ムーンウォーク

「その場ムーンウォーク」の基本と表現の応用について解説しています。

その場ムーンウォークのやり方|その場にとどまり歩いてみせる表現
「その場ムーンウォーク」の基本と「その場ムーンウォーク」の表現の応用について解説します。

ムーンウォークの凄さ

マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の何が「すごい」のかについて解説しています。

マイケル・ジャクソンのダンス|ムーンウォークの3つの「凄さ」とは
マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の何が「すごい」のかについて解説します。

マイケルを乗り越える

マイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための考察と方法について全5回シリーズで解説しています。

マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越える方法
マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越えるための考察と方法を全5回シリーズで解説します。

アニメーションダンス

「5つの事例」をもとにマイケル・ジャクソンが影響を受けた「アニメーション」の表現について解説しています。

マイケル・ジャクソンのアニメーションダンス|5つの事例で見る影響を受けた表現
「5つの事例」をもとにマイケル・ジャクソンが影響を受けた「アニメーション」の表現について解説します。