回転ムーンウォークのやり方|回転軸の右足を移動しないで回転する
回転ムーンウォークを習得する上でおさえておきたい主要6種類の基本を全7回にわたり解説していきます。
シリーズ7回目の今回は、デンジャラスツアー以降バージョンにスポットを当て、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」をベースとする足の使い方の基本について解説していきたいと思います。
回転ムーンウォークとは
まずはじめに前回の解説を振り返ります。
回転ムーンウォークのはじまり
回転ムーンウォークは、もともとは「ムーンウォーク」(The Moonwalk)という名称として、エレクトリックブガルーズ(Electric Boogaloos)(※1)のメンバーのティッキン・ウィル(Tickin’ Will)が1975年に考案し、リーダーのブガルー・サム(Boogaloo Sam)(※2)によって発展していったスタイルで、ひざをやわらかく使いながら円を描くように体重移動していく表現を利用して、月の上を歩いているかのようにゆっくりと歩いてみせることによって表現します。
かかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」をマイケル・ジャクソンが「ムーンウォーク」と命名し1983年のモータウン25(※3)で披露したことによって、一般にはバックスライドの表現が「ムーンウォーク」として広く知られるようになりましたが、歴史的観点からするとブガルー・サムの、ひざをやわらかく使いながら円を描くように体重移動していく表現を利用して、月の上を歩いているかのようにゆっくりと歩いてみせる表現が本来の「ムーンウォーク」(The Moonwalk)です。
この「ムーンウォーク」(The Moonwalk)の表現はマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)とは明らかに異なる表現コンセプトで創られたスタイルであるため、現在はそれとは区別して「オリジナルムーンウォーク」(Original Moonwalk)と呼ばれています。
※1:ブガルー・サムによって1977年に結成された伝説的ダンスクルー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」(Popping)と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」(Boogaloo)の2大ダンススタイルを世に送り出した。なお、結成時の1977年は、エレクトリックブガルーロッカーズ(Electric Boogaloo Lockers)の名称でカリフォルニア州フレズノを本拠地としていたが、1978年にカリフォルニア州ロングビーチへ移転後「エレクトリックブガルーズ」へと改名した。
※2:エレクトリックブガルーズのリーダー。曲のビートに反応してポーズを形成した直後に身体の各部位を同時に弾いて表現する「ポッピング」と、腰・ひざ・頭などの身体のあらゆる部分のロールを自在に使いこなすことによって流動的に表現する「ブガルー」を創り出したオリジネーター(考案者)。マイケル・ジャクソンの作品にはショートフィルム「ゴースト」に出演した。
※3:マイケル・ジャクソンがジャクソン5時代に所属していたレコードレーベル「モータウン」の設立25周年を記念して開催された音楽の祭典。そのハイライトは1983年5月16日に全米でTV放送された。祭典の正式名称は「Motown25: Yesterday, Today, Forever」(モータウン25:昨日、今日、そして永遠に)。この祭典がマイケルにとってムーンウォーク(バックスライド)初披露の場となった。
2つの系統
マイケル・ジャクソンが表現する回転ムーンウォークにはおもに2つの系統があり、1つは、ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)(※4)の影響を受けた、円を描くように体重移動することによって表現する「オリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク」と、もう1つは、ブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)(※5)の影響を受けた、円を描くように足をスライドすることによって表現する「サークルフロート系回転ムーンウォーク」(※6)です。
マイケル・ジャクソンは1984年のジャクソンズヴィクトリーツアーから1987年のバッドツアー初期までサークルフロート系回転ムーンウォークを採用し、1988年のバッドツアー中期以降はオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークを採用しました。
※4:マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を自分の表現として確立していく過程において影響を受けた2人のレジェンドのうちの一人。1980年にマイケルへバックスライドを教えたことをきっかけに、のちに1987年公開のショートフィルム「Bad」や1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalのコレオグラファー兼ダンサーとしてマイケルの仕事にたずさわり、Badでは地下鉄構内のシーン、Smooth Criminalでは、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。回転ムーンウォークに関しては、1979年にキャスパー・キャ二デイト(Geron “Caszper” Canidate)(※8)とクーリー・ジャクソン(Derek “Cooley” Jaxson)(※9)と共に「Jeffrey Daniel & The Eclipse」として、当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」へ出演した際に、ブガルー・サムのオリジナルムーンウォークに影響を受けた、円を描くように体重移動することによって表現する回転ムーンウォークを披露(※参照:YouTube)。この円を描くように体重移動することによって表現する回転ムーンウォークが、のちに映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでマイケルが採用することとなるオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークの原型となった。
※5:マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を自分の表現として確立していく過程において影響を受けた2人のレジェンドのうちのもう一人のレジェンド。1983年から1991年までマイケルのソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)として、1984年のジャクソンズヴィクトリーツアー以降のBillie Jean終盤の間奏部分のダンスパートをはじめ、ムーンウォーク(バックスライド)を含む一連のパフォーマンスを完成度の高いレベルまで引き上げる仕事にたずさわった。回転ムーンウォークに関しては、1984年公開の映画「ブレイクダンス」(Breakin’)のオープニングシーンで、つま先からかかとにかけて円を描くように足をスライドしていく表現を利用して、床から浮いているかのように回転しながら自在に移動していくサークルフロート(回転ムーンウォーク)を披露(※参照:YouTube)。この円を描くように足をスライドすることによって表現するサークルフロートが、のちに1984年のジャクソンズヴィクトリーツアーから1987年のバッドツアー初期までマイケルが採用することとなるサークルフロート系回転ムーンウォークの原型となった(※7)。
※6:マイケル・ジャクソンが採用したおもなサークルフロート系回転ムーンウォークの解説は、第1回目の「回転ムーンウォークのやり方|円の中心に対して自転しながら公転する」、第2回目の「回転ムーンウォークのやり方|2つの折り返し点をターンで回転する」、第3回目の「回転ムーンウォークのやり方|2つの折り返し点をスライドで回転する」を参照。
※7:ブガルー・シュリンプバージョンの、円を描くようにスライドして回転する「サークルフロート系回転ムーンウォーク」の解説は、第4回目の「回転ムーンウォークのやり方|円を描くようにスライドして回転する」を参照。
※8:当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」にエレクトリックブガルーズのダンススタイルの一つである「バックスライド」を早い時期に持ち込み披露したダンサーの一人。1979年にクーリー・ジャクソンと共にマイケル・ジャクソンへバックスライドを教えたことをきっかけに、1987年公開のショートフィルム「Bad」では地下鉄構内のシーン、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」ではSmooth Criminalの、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。
※9:当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」にエレクトリックブガルーズのダンススタイルの一つである「バックスライド」を早い時期に持ち込み披露したダンサーの一人。1979年にキャスパー・キャニデイトと共にマイケル・ジャクソンへバックスライドを教えたことをきっかけに、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでは、身体を前傾する通称「ゼログラビティ」から回転ムーンウォークへ展開するシーンでマイケルの脇を固める4人のダンサーの一人として出演した。
オリジナルムーンウォーク系
1988年のバッドツアー中期以降からマイケル・ジャクソンが採用したオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークは次の2つです。
1. Smooth Criminalバージョン
回転軸の右足を移動して回転する「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」。
2. デンジャラスツアー以降バージョン
回転軸の右足を移動しないで回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」。
1. Smooth Criminalバージョン
1つ目は、1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalで披露した、回転軸の右足を移動して月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」です。
マイケル・ジャクソンのオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク(右足回転軸移動型回転ムーンウォーク)がはじめて登場したのは1988年3月におこなわれたグラミー賞のThe Way Make Me Feelのパフォーマンスで、その後バッドツアー中期以降のBillie Jeanへ取り入れられました。
そして1988年10月公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalでこの回転ムーンウォークを披露してからは、2回目のワールドツアーの1992年のデンジャラスツアーと最後のワールドツアーの1996年のヒストリーツアーで同曲のダンスパートへ取り入れられました。
この回転ムーンウォークは、「回転軸の右足を移動してからつま先を支点として回転する表現」に特徴があります。
2. デンジャラスツアー以降バージョン
2つ目は、1992年のデンジャラスツアー以降のBillie Jeanで披露した、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」です。
この回転ムーンウォークはバッドツアー中期のBillie Jeanでも登場したことがある回転ムーンウォークで、前述の「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」がBillie JeanからSmooth Criminalへ移行したことにともない1992年のデンジャラスツアーから本格導入し、1996年のヒストリーツアーでも採用しました。
またこの回転ムーンウォークは、Smooth Criminalバージョンの「右足回転軸移動型回転ムーンウォーク」の足の使い方を引き継ぎながらも、Smooth Criminalバージョンのように回転軸の右足を移動してからつま先を支点として回転するのではなく、「回転軸の右足を移動せずにその場でつま先を支点として回転する表現」に特徴があります。
おさえておきたいこと
この回転ムーンウォークでおさえておきたいことは、「右足回転軸移動型」と「右足回転軸固定型」の表現の違いを「上半身の表現の違いで判断してはいけない」ことです。
たとえばデンジャラスツアー中期の公演都市ブカレスト(ルーマニア)で披露した回転ムーンウォークを見ると、上半身の表現はSmooth Criminalバージョンとは異なる表現ではあるものの、足の表現の前半パートはSmooth Criminalバージョンと同じ「右足回転軸移動型」となっていることがわかります。
つまりマイケル・ジャクソンは、この回転ムーンウォークで上半身の表現をSmooth Criminalバージョンと異なる表現としつつも、前半パートではSmooth Criminalバージョンの「右足回転軸移動型」をおこない、後半パートからデンジャラスツアー以降バージョンの「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」へ切り替えて表現している、ということです。
やり方を理解する
以上を踏まえ、今回はデンジャラスツアー以降バージョンにスポットを当て、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」をベースとする足の使い方の基本について解説していきたいと思います。
「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」の基本
ここからはデンジャラスツアー以降バージョンの、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」をベースとする足の使い方の基本について解説していきます。
今回の解説では、私の表現する次の回転ムーンウォークの動画を参考動画としています。
解説:この動画の表現について
1992年のデンジャラスツアー中期の公演都市ブカレスト(ルーマニア)のBillie Jeanでマイケル・ジャクソンが披露した、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」の表現は、それを構成するおもな「表現の要素」に、1980年にマイケルへバックスライドを教えたことをきっかけに、のちに1987年公開のショートフィルム「Bad」や1988年公開の映画「ムーンウォーカー」のSmooth Criminalのコレオグラファー兼ダンサーとしてマイケルの仕事にたずさわったジェフリー・ダニエルが1979年に音楽番組「ソウルトレイン」で披露した、円を描くように体重移動することによって表現する「オリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク」の表現と、その表現の原型であるエレクトリックブガルーズのブガルー・サムの「オリジナルムーンウォーク」の表現の各種要素が読み取れることから、マイケルはこれらの表現からジェフリー・ダニエルの「円を描くようにつま先からかかと、かかとからつま先へ体重移動する表現」、「両足のかかとで方向転換する表現」、およびブガルー・サムの「身体の内側に向かって回転する表現」、「月の上を歩いているかのようにみせる表現」の各種要素を抽出し、オリジナル表現の「回転軸の右足を移動せずにその場でつま先を支点として回転する表現」を組み合わせて再構築することによって、マイケルの解釈によるマイケルバージョンのオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク、すなわち、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」を表現していることがわかります。
これを踏まえ、この動画で私が表現している回転ムーンウォークは、1992年のデンジャラスツアー中期のBillie Jeanでマイケル・ジャクソンが披露した、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」の「回転軸の右足を移動せずにその場でつま先を支点として回転する表現」をベースに、ジェフリー・ダニエルのオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークの「円を描くようにつま先からかかと、かかとからつま先へ体重移動する表現」、「両足のかかとで方向転換する表現」と、ブガルー・サムのオリジナルムーンウォークの「身体の内側に向かって回転する表現」、「月の上を歩いているかのようにみせる表現」がおもな構成要素であり、これらの表現から「表現の要素」を抽出し再構築することによって、私の解釈による私バージョンの、回転軸の右足を移動しないで回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」を表現しています。
「右足回転軸固定型」前半の動作
それでは「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」前半の動作の解説に入ります。
回転ムーンウォークのやり方①
ここではスタートポジション(左0・右0)からかかとを軸に反時計回りに回転し(左1・右1)、左足の外側側面(2)から右足のつま先部分にかけて時計回りに体重移動していく動作について解説します。
スタートポジション
両足を開いて立ちます。
つま先は軽く外側を向いています。
この姿勢がスタートポジションです(左0・右0)。
両足
両足のつま先を床から軽く離し、かかとを軸に反時計回りに回転していきます。
この時つま先は左足が5時方向、右足が6時方向を向くように回転します(左1・右1)。
左足
左足の外側側面(2)、つま先方向(3)へ時計回りに体重移動していきます。
右足
左足を時計回りに体重移動していく流れに沿って、右足のつま先部分へ体重移動していきます。
右足へ体重移動していく中で、右足は徐々にかかとを浮かせていき、体重移動後は右足の指から指の付け根に体重をかけてつま先を立てます(2)。
体重
右足のつま先部分へ体重移動してつま先を立てた時(2)、半分以上の体重は右足の指から指の付け根にかかっています。
左足にもつま先部分に一部の体重がかかっていますが、床に添える程度としておきます。
身体の向き
5時方向へ切り替わります。
回転ムーンウォークのやり方②
ここでは時計回りに体重移動しながら足を移動していく流れに沿って、軸足の右足を3時方向へ反時計回りに回転して身体の向きを変えていく動作について解説します。
右足
前回の2の状態(右足の指から指の付け根に半分以上の体重をかけてつま先を立てている状態)から、つま先を支点として3時方向へ反時計回りに回転していき(3)、かかとを下ろして床へ着地します(4)。
左足
右足を軸に回転している時に、左足は4’を経由してかかとを右足のかかとへ引き寄せるようにカーブを描きながらA点へ移動していき、右足のかかとが床へ着地するタイミングと合わせて左足のかかとをA点へ到着します(4)。
この時左足のつま先は、2時方向を向いています。
体重
右足のかかとが床へ着地するタイミングと合わせて左足のかかとをA点へ到着した時(左4、右4)、体重は両足のかかとへ同等程度にかかっています。
身体の向き
2時方向へ切り替わります。
前半の動作の流れ
ここまでが「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」前半の動作です。
前半の動作の流れをスローモーションで示したものが次の動画となります。
「右足回転軸固定型」後半の動作
ここからは「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」後半の動作の解説に入ります。
回転ムーンウォークのやり方③
ここでは時計回りに体重移動しながら足を移動していく流れに沿って、かかとを軸に反時計回りに回転し(左5・右5)、左足の外側側面(6)から右足のつま先部分にかけて時計回りに体重移動したあと、軸足の右足を9時方向へ反時計回りに回転して身体の向きを変えていく動作について解説します。
両足
時計回りに体重移動しながら足を移動していく流れに沿って、両足のつま先を床から軽く離し、かかとを軸に反時計回りに回転していきます。
この時つま先は左足が11時方向、右足が12時方向を向くように回転します(左5・右5)。
左足 (1)
左足の外側側面(6)、つま先方向(7)へ時計回りに体重移動していきます。
右足
左足を時計回りに体重移動していく流れに沿って、右足のつま先部分へ体重移動していきます。
右足へ体重移動していく中で、右足は徐々にかかとを浮かせていき、体重移動後は右足の指から指の付け根に体重をかけてつま先を立てます(6)。
そしてつま先を支点として9時方向へ反時計回りに回転していき(7)、かかとを下ろして床へ着地します(8)。
左足 (2)
右足を軸に回転している時に、左足は8’を経由してかかとを右足のかかとへ引き寄せるようにカーブを描きながらB点へ移動していき、右足のかかとが床へ着地するタイミングと合わせて左足のかかとをB点へ到着します(8)。
この時左足のつま先は、8時方向を向いています。
体重
右足のつま先部分へ体重移動してつま先を立てた時(6)、半分以上の体重は右足の指から指の付け根にかかっています。
左足にもつま先部分に一部の体重がかかっていますが、床に添える程度としておきます。
また、右足のかかとが床へ着地するタイミングと合わせて左足のかかとをB点へ到着した時(左8、右8)、体重は両足のかかとへ同等程度にかかっています。
身体の向き
右足のつま先部分へ体重移動してつま先を立てた時(6)、身体の向きは11時方向へ切り替わります。
また、右足のかかとが床へ着地するタイミングと合わせて左足のかかとをB点へ到着した時(左8、右8)、身体の向きは8時方向へ切り替わります。
後半の動作の流れ
ここまでが「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」後半の動作です。
後半の動作の流れをスローモーションで示したものが次の動画となります。
動作のまとめ
以上がデンジャラスツアー以降バージョンの、回転軸の右足を移動しないで月の上を歩いているかのように回転する「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」をベースとする足の使い方の基本についての解説でした。
2周目以降をおこなう場合は、「回転ムーンウォークのやり方①」の両足の動作からおこないます。
最後に、今回解説した「右足回転軸固定型回転ムーンウォーク」の動作の流れを次のスローモーション動画でおさらいしましょう。
「大切なこと」とは
今回が回転ムーンウォークを習得する上でおさえておきたい主要6種類の基本を全7回にわたり解説してきたシリーズの最終回となります。
周知のとおり、1983年のモータウン25でムーンウォーク(バックスライド)を初披露したことに端を発するマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」は、その後、その場ムーンウォークや回転ムーンウォーク、そしてサイドムーンウォークへと展開し、いまでは誰もがやってみたいと思った時にこれら「ムーンウォーク」を「ハウツー」として習えるところまで普及しました。
それから数十年が経過したいま、まわりを見わたすと、「ムーンウォーク」を教える側、それを習う側をはじめ、「ムーンウォーク」を表現する側、それを見るオーディエンス側のほとんどの人が、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を型に落とし込んだ「ハウツー」やマイケルの「ムーンウォーク」をそのままトレースした「完全コピー」で満足してしまうようになってしまいました。
そしていつのまにか、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を完全コピーすることが「ムーンウォーク」を習得する目的となり、マイケルの「ムーンウォーク」へできるだけ近づけて再現できる人が「上手い」と評価され、ずれていると容赦なく「下手」と評価されるようになってしまいました。
端的に言えば、私たちは数十年間もの長い間、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」から学ぶべき方向性を見誤っていたと言ってよいでしょう。
なぜなら、クリエイティブの観点からすると、マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」の完全コピーはマイケルの「二番煎じ」であり、表現者として「新しい表現」、「価値観」を何も提示していないからです。
本当の課題とは
本来マイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」から私たちが学ぶべきこととは、クリエイティブにおける「既存の表現を解釈する考え方」、「オリジナリティーを提示する考え方」、「新しい価値観を創り出す考え方」などを通して、マイケルの表現する「ムーンウォーク」からクリエイティブの「本質」を見極め、自分の表現としてつかみ取ることにあります。
なぜなら私たちが「ムーンウォーク」を表現する上で取り組むべき「本当の課題」とは、マイケル・ジャクソンの表現する「ムーンウォーク」から「クリエイティブの本質」を学び取り、「自分の表現としてのムーンウォーク」を提示することによってマイケルの「ムーンウォーク」を乗り越え、独創的に新しく展開していくことだからです。
マイケルを乗り越える方法
これまでマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を乗り越えるために先人がおこなってきたことは、マイケルの「ムーンウォーク」をそのまま完全コピーし、その「技術」に対して追いつき追い越せということでした。
しかしこのやり方には、たとえマイケル・ジャクソンよりも精度の高い「ムーンウォーク」を身につけて「技術」で追い抜いたとしても、結局はマイケルがたどった道をそのままなぞっただけであり、マイケルの「二番煎じ」にしかならず、乗り越えたことにはならないという限界がありました。
私たちはマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーク」を「技術の観点」からではなく「クリエイティブの観点」からとらえ、マイケルの表現する「ムーンウォーク」から「クリエイティブの本質」を学び取り、乗り越えるべきだったのです。
そこで次に紹介するシリーズの「マイケル・ジャクソンのムーンウォークを乗り越える方法」では、マイケルの「ムーンウォーク」を乗り越えるための第一歩として「バックスライド」を取り上げ、マイケルのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための考察と方法を全5回にわたり解説していきます。
第1回から順に読み進めていくことによって、これまで私たちがマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)に対して無意識に抱いていた「マイケルを乗り越えることなんてできるはずがない」に対する「勘違い」、「思い込み」、「盲点」を段階的に解放し、最終的にはマイケルのムーンウォーク(バックスライド)を乗り越えるための「一つの答え」を解説していく構成としています。
また、内容は「バックスライド」を例に解説していますが、「クリエイティブの本質」をテーマとしていますので、すべての「ムーンウォーク」はもとより、ひいてはすべてのストリートダンスにも通底する内容となっています。
第1回|誰がムーンウォークを教え、そして授けたのか
シリーズ第1回目は、「誰が本当の意味でマイケルにムーンウォークを教え、そして授けたのか」について解説します。
1988年に出版されたマイケル・ジャクソンの自伝「ムーンウォーク」でマイケルは、ムーンウォーク(バックスライド)を教えてくれたのは3人の子供たちで(※原文は「three kids」)、彼らから基本を授かったとしか語っておらず、誰からムーンウォーク(バックスライド)を教わったのかは明らかにしないままこの世を去りました。
マイケル・ジャクソンへムーンウォーク(バックスライド)を教えた人物が誰なのかについては諸説ありますが、マイケルが1983年のモータウン25でムーンウォーク(バックスライド)を初披露する前に、少なくとも3人のキッズ(kids:若者たち)と3人の子供たち(children)に出会っていることがわかっています。
当時マイケル・ジャクソンが構想していたことは、既存のバックスライドとは違う「新しい価値観」としての新しいバックスライドをクリエイトする(創り出す)ことでした。
自伝「ムーンウォーク」では、ムーンウォーク(バックスライド)を教えてくれたのは3人の子供たちで、彼らから基本を授かったと語ることによって、何の問題もなくさらりとやってのけたかのように演じているマイケル・ジャクソンですが、実際はムーンウォーク(バックスライド)をクリエイトしていく過程において「表現者」としての悩みと苦労がありました。
本解説では、3人のキッズ(kids:若者たち)と3人の子供たち(children)との出会いを通じてマイケル・ジャクソンのムーンウォーク(バックスライド)の表現の確立に貢献した人物のうち、マイケルが影響を受けた2人のレジェンドに着目しています。
その2人のレジェンドとは、ジェフリー・ダニエルとブガルー・シュリンプです。
以上を踏まえ第1回目は、マイケル・ジャクソンがムーンウォーク(バックスライド)を初披露した1983年のモータウン25前後のおもな出来事を時系列で見ていくことによって、誰が本当の意味でマイケル・ジャクソンにムーンウォーク(バックスライド)を教え、誰が本当の意味でそれを授けたのかについて考察していきたいと思います。
それではまた次のコンテンツでお会いしましょう。
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