マイケル・ジャクソンが披露した主要ムーンウォーク8種類の解説

マイケル・ジャクソンが披露した主要ムーンウォーク8種類の解説

「ムーンウォーク」といえばマイケル・ジャクソンの代名詞となっている、足を交互に後方へスライドしながら進んでいく「バックスライド」が有名ですが、マイケルはこのムーンウォーク以外にも数種類のムーンウォークを披露していました。

そのムーンウォークを大別すると3種類のムーンウォークに分ける事が出来ます。

一つは、足を後方へ交互にスライドして月面上を前に進むように後ろへ滑らかに進んでいくムーンウォーク(バックスライド)、もう一つは、横にスライドしながらムーンウォークするサイドウォーク(サイドフロート)、そして、360度に回転する回転ムーンウォークです。

そのうち回転ムーンウォークに関しては2種類のムーンウォークがあります。

一つは、ブガルー・シュリンプ(Boogaloo Shrimp)を原型とし、足を時計回り、あるいは反時計回りにスライドしながら360度回転するサークルフロート系回転ムーンウォークです。

そしてもう一つは、エレクトリックブガルーズのブガルー・サム(Boogaloo Sam)を原型とし、時計回り、あるいは反時計回りに重心移動を行いながら360度の弧を描くように身体を回転していくオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークです。

これを踏まえ、本解説ではバックスライドの派生型のムーンウォークの「その場ムーンウォーク」を加えて、ムーンウォーク(バックスライド)、その場ムーンウォーク、サイドウォークの3種と、回転ムーンウォークの5種の計8種類の主要ムーンウォークについて解説します。

ムーンウォーク(バックスライド)

後方へ交互にスライドしながら行うムーンウォーク

マイケル・ジャクソンのムーンウォークの歴史は、1983年にモータウン25のBillie Jeanのパフォーマンスで初披露したムーンウォーク(バックスライド)から始まりました。

バックスライドについて少しふれておくと、「バックスライド」というステップそのものはマイケル・ジャクソン自身が0から創り出したものではなく既に存在していたステップです。

1988年に出版された自伝「ムーンウォーク」(※1)でも、”この頃までに、このムーンウォークはもう路上のダンサーたちの間では流行りつつあったのですが、僕がやったことで、少しばかりその評価が高まったと思っています。”とマイケル・ジャクソン本人が語っています。

ストリートダンスの歴史において全米で初めてバックスライドを披露したのは、エレクトリックブガルーズ(Electric Boogaloos)のクリーピン・シッド(Creepin Sid)です。

1978年の11月に全米放送された「Midnight Special」と「Hot City TV Show」の2つのTV番組で披露しました。

マイケル・ジャクソンにムーンウォークを教えた一人として有名なジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)は、このエレクトリックブガルーズのバックスライドの影響を受けて当時全米で最先端のストリートダンスを発信していた音楽番組「ソウルトレイン」へ1979年に出演し、2人の仲間と共にバックスライドを披露しました。

このように「バックスライド」というステップはマイケル・ジャクソンのオリジナルステップではないものの、マイケルの凄いところは、既に存在していたかかとからつま先にかけて後方へ交互にスライドしながら移動していく「バックスライド」を、月の上を歩いているかのように後ろと前へ同時に歩いていく「ムーンウォーク」と解釈し、自分(マイケル)が表現するバックスライドは「ムーンウォーク」であると宣言してオリジナルのブランド・アイデンティを確立した事です。

※1:マイケル・ジャクソン著、田中康夫訳、河出書房新社、2009年

参考

ムーンウォーク(バックスライド)のやり方の解説

ムーンウォーク(バックスライド)のやり方についてはこちらでまとめて解説しています。

ムーンウォーク講座|10のステップで上達するムーンウォークのやり方
マイケルのムーンウォークを従来のハウツーや完全コピーではなく「クリエイティブの観点」から解説します。

マイケルにムーンウォークを教えたのは誰か

マイケル・ジャクソンにムーンウォークを教えたダンサーのジェフリー・ダニエルとブガルー・シュリンプの2人にスポットを当てて解説しています。

誰がマイケル・ジャクソンにムーンウォークを教えたのか
マイケル・ジャクソンはなぜムーンウォークを本当の意味で授けてくれた人を明かさなかったのでしょうか。

その場ムーンウォーク

後ろに進まずにその場で行うムーンウォーク

「その場ムーンウォーク」はバックスライドの派生型のムーンウォークで、1984年に開催されたジャクソンズヴィクトリーツアーのHuman Natureにおいて初めて披露されました。

この「その場ムーンウォーク」は、ヴィクトリーツアーと1987年のバッドツアーではHuman Nature、Billie Jean、Shake Your Bodyで披露され、1991年のアルバム「デンジャラス」(DANGEROUS)リリース以降はJamのショート・フィルムにも登場しました。

そして1992年のデンジャラスツアーのBillie Jeanで披露した「その場ムーンウォーク」でクオリティーが最高潮に達します。

参考

「その場ムーンウォーク」のやり方の解説

マイケル・ジャクソンの「その場ムーンウォーク」の仕組みと足捌きの方法について解説しています。

マイケル・ジャクソンの「その場ムーンウォーク」の仕組みとやり方
マイケル・ジャクソンの「その場ムーンウォーク」の仕組みと足捌きのやり方について解説します。

サイドウォーク(サイドフロート)

横にスライドしながら行うムーンウォーク

横方向にムーンウォークするサイドウォーク(サイドフロート)は1987年に開催されたバッドツアーのShake Your Bodyのパフォーマンスで初めて披露されました。

その後マイケル・ジャクソンのサイドウォークは、1992年のデンジャラスツアーや1996年のヒストリーツアーではBillie Jeanを始め、JamやDangerous、そしてScreamやStranger In Moscowなどで披露されるようになります。

また、バッドツアーの初期の頃は横方向へ月面を滑るようにムーンウォークする表現でしたが、その後小刻みに横方向へ移動していく表現やサイドウォークしながら移動するロボットの表現も登場するなど、公演を重ねるごとにサイドウォークの表現は変化していきました。

参考

サイドウォークのやり方の解説

マイケル・ジャクソンのサイドウォークの中で一番オーソドックスな表現を行っていたバッドツアーの初期のサイドウォークの仕組みと足捌きの方法について解説しています。

サイドウォークのやり方|マイケルに学ぶ横へ移動するムーンウォーク
マイケルのサイドムーンウォークの基本となるサイドウォークのやり方とアニメーションについて解説します。

回転ムーンウォーク

回転しながら行うムーンウォーク

マイケル・ジャクソンの回転ムーンウォークはジャクソンズヴィクトリーツアー(1984年)のBillie Jeanで初披露されました。

前述のようにマイケル・ジャクソンが披露した回転ムーンウォークには2種類のムーンウォークがあります。

その中でも主要な回転ムーンウォークは、「サークルフロート系回転ムーンウォーク」の3種類と、「オリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォーク」の2種類の計5種類です。

回転ムーンウォーク①:サークルフロート系

マイケル・ジャクソンは1983年のムーンウォークの初披露以降、ブガルー・シュリンプをソロパートのアドバイザー(パーソナルポッピングインストラクター)に据え、Billie Jean終盤のブレイクダウンのソロパートをアップグレードします。

そのため1984年のヴィクトリーツアーで披露された回転ムーンウォークは、ブガルー・シュリンプのサークルフロート系回転ムーンウォークがベースとなっているのが特徴です。

この時期に開発された主な回転ムーンウォークは3つあり、ツアーの最初の公演都市のカンザスシティで披露されたスネーキングのコブラを変形したものに近いスタイルの回転ムーンウォーク、ツアー中盤のトロントで披露された「自転公転型回転ムーンウォーク」、そしてツアー最後の公演都市のロサンゼルスで披露された「集大成型回転ムーンウォーク」です。

そのうち本解説で取り上げるのはトロントの「自転公転型回転ムーンウォーク」とロサンゼルスの「集大成型回転ムーンウォーク」です。

※カンザスシティの回転ムーンウォークは歴史の観点においては資料的価値がありますが、マイケル・ジャクソン本人もツアーの初期に少し披露しただけで早々に上述の2つの回転ムーンウォークへ切り替えたように回転ムーンウォークの実験過程のクオリティーであったため本解説では除外しています

※ブガルー・シュリンプのサークルフロート系回転ムーンウォークについてはこちらで解説しています

マイケルが最も影響を受けたブガルーシュリンプの回転ムーンウォーク
ブガルー・シュリンプの回転ムーンウォーク(サークルフロート)の仕組みと身体の動かし方を解説します。

自転公転型回転ムーンウォーク

ヴィクトリーツアー トロントバージョンの「自転公転型回転ムーンウォーク」の特徴は、時計回りに描く円の中心に対して反時計回りに自転しながら周回軌道を公転して1周する点です。

参考

自転公転型回転ムーンウォークのやり方の解説

この回転ムーンウォークのやり方についてはこちらで解説しています。

マイケル・ジャクソンの回転ムーンウォークのやり方|トロントVer.
1984年のヴィクトリーツアートロントでマイケルが披露した自転公転型回転ムーンウォークを解説します。

集大成型回転ムーンウォーク

ヴィクトリーツアー ロサンゼルスバージョンの「集大成型回転ムーンウォーク」の特徴は、トロントバージョンの自転公転型回転ムーンウォークの身体の使い方を引き継ぎながらも自転公転型回転ムーンウォークのように円の中心に対して反時計回りに自転しながら周回軌道を公転するのではなく、左右2つの折り返し点を経緯して反時計回りに1周する点です。

参考

集大成型回転ムーンウォークのやり方の解説

この回転ムーンウォークのやり方についてはこちらで解説しています。

マイケルジャクソンの回転ムーンウォークのやり方|ロサンゼルスVer.
ヴィクトリーツアーの集大成型回転ムーンウォークである「ロサンゼルスバージョン」を解説します。

バッドツアー横浜スタジアムバージョン

1984年のヴィクトリーツアーから3年後の1987年に開催されたバッドツアーでマイケル・ジャクソンは、ロサンゼルスバージョンの集大成型回転ムーンウォークをベースにアップデートした「完成型回転ムーンウォーク」を披露します。

バッドツアーの最初の訪問国の日本で披露した”横浜スタジアムバージョン”の「完成型回転ムーンウォーク」は、サークルフロート系回転ムーンウォークの頂点を極めたパフォーマンスでした。

この「完成型回転ムーンウォーク」の特徴は、回転する方向がロサンゼルスバージョンの集大成型回転ムーンウォークの反時計回りに対して時計回りである点と、折り返し点において、ロサンゼルスバージョンではターンで処理していたところを足捌き(スライド)によってターンしている点です。

参考

完成型回転ムーンウォークのやり方の解説

この回転ムーンウォークのやり方についてはこちらで解説しています。

サークルフロート系の頂点を極めたバッドツアーの回転ムーンウォーク
1987年のバッドツアーから「横浜スタジアムバージョン」の完成型回転ムーンウォークを解説します。

回転ムーンウォーク②:オリジナルムーンウォーク系

マイケル・ジャクソンは1987年のバッドツアーを境にこれまで開発してきたサークルフロート系回転ムーンウォークを一切封印し、もう一つの系統の回転ムーンウォークであるオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークへ移行します。

Smooth Criminalバージョン

バッドツアーの翌年の1988年に公開されたマイケル・ジャクソン主演の映画「ムーンウォーカー」ではSmooth Criminalで身体を前傾する通称”ゼログラビティ”のパフォーマンスシーンが有名ですが、オリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークはそのゼログラビティのすぐ後に登場します。

それがエレクトリックブガルーズのブガルー・サムを原型とし、ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)がアレンジしてマイケル・ジャクソンが独自のバージョンとして確立したSmooth Criminalバージョン”のオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークです。

この回転ムーンウォークによって、マイケル・ジャクソンはオリジナルムーンウォーク系回転ムーンウォークの頂点を極めます。

参考

Smooth Criminalバージョンの回転ムーンウォークのやり方の解説

この回転ムーンウォークのやり方については【足捌き編】と【上半身編】に分けて解説しています。

回転ムーンウォークのやり方|Smooth Criminalバージョン【足技】
映画「ムーンウォーカー」でゼログラビティの後に行う回転ムーンウォークの足捌きについて解説します。
回転ムーンウォークのやり方|Smooth Criminalバージョン【上半身】
映画「ムーンウォーカー」でゼログラビティの後に行う回転ムーンウォークの上半身の動きを解説します。

マイケル・ジャクソン最終バージョン

1992年は2回目のワールドツアーとなるデンジャラスツアーが開催されます。

ここまでに回転ムーンウォークの2つの系統の頂点を極めていたマイケル・ジャクソンは、「ムーンウォーク」の原点である「オリジナルムーンウォーク」に王手をかけ、このツアーのブカレストで披露した回転ムーンウォークで原型越えを達成します。

それが「オリジナルムーンウォーク」の直系に位置づけられる”マイケル・ジャクソン最終バージョン”の「超越型回転ムーンウォーク」です。

この”マイケル・ジャクソン最終バージョン”の超越型回転ムーンウォークは、1992年のデンジャラスツアーから1996年のヒストリーツアーにかけて登場しました。

身体の使い方は”Smooth Criminalバージョン”の回転ムーンウォークの身体の使い方と共通している部分がありますが、Smooth Criminalバージョンとの違いは、身体の向きを切り替える際に、右足を前進してあらかじめ回転軸を作ってから向きを変えるのではなく、その場で右足のつま先を支点として身体の向きを変える点にあります。

参考

マイケル・ジャクソン最終バージョンの回転ムーンウォークのやり方の解説

この回転ムーンウォークのやり方についてはこちらで解説しています。

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それでは、またの機会にお会いしましょう。

KAIZOU NINGEN

ダンス研究家。専門はムーンウォークとアニメーションダンス。幼少期にマイケル・ジャクソンのメカニカルな動きを取り入れたダンスに影響を受け、1990年よりダンスの研究を始める。マイケル・ジャクソン没後10年特集番組へ情報提供(TBS「一番だけが知っている」:2019年)。

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